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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

その台詞が癇に障ったのか、那砂さんはコップに注いだ焼酎を笑顔でドンッと音を立てて置く。
「颯太くん?ボロじゃなくて“趣”があるって言うのよ。お・も・む・き!」
「すっ、すいません」
「那砂の店ですからボロでいいですよ。わざわざ謝らなくていいです」
「ああ!?理人くんもう一回言ってみろ?あとでちんこ揉むぞ」
コントなのか、喧嘩なのか分からない二人のやり取りを止めることができる人がいなくて妙な空気がしばらく流れた。
三人とも黙り込んでからまた那砂さんがビールをぐびっと飲み、結婚式の写真を手に取って見る。
「アタシたちが落ち込んでいた理由はね……、この写真を見ていたら思い出しちゃったのよ」
「落ち込むことないじゃないですか。おめでたい写真なんですし」
「だって、風子ちゃんはもう……」
那砂さんが涙ぐんだ声でそう言うと理人さんが持っていた写真を置いて目頭を押さえ始める。
でもそんな二人を見て颯太さんは呆れて困ったような顔をしていた。
「理人くんまで泣かないでよ。アタシまで泣きたくなるでしょ……。
……って、颯太くんはなんで悲しい顔一つしないのよ?身内でしょ?」

