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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

「―――――いつになったら引っ越すの?また同じ事件があったらと思うと物騒で子供のことを一人で学校に行かせられないんだけど」
「早く出て行ってくれないとこっちはいつまで経っても怖くて出て歩けないわ」
「すみません。今年中には必ず出て行きますのでもう少し待ってください」
見えたのは怒り口調で女性たちに向かって頭を下げている姿。
話を聞く限り先程弾いていたピアノのことではないようだ。
「大丈夫ですか……?」
湿っぽい話が済んで戻ってきた時、心配になった私はトコトコと駆け寄って顔を覗いた。
なんでもないと言っているように笑顔を見せてくれるけど、無理をしているような気がしてじっと見つめる。
「平気だよ。……こうすればすぐに気分が安らぐから」
距離を縮められて両手で腰を引き寄せられると包むように抱きしめられた。
両腕を閉じたまま抱かれているから自分の手の置き場がない。
「っ……、あの……」

