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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

鍵盤を押す順番は完璧に当たっていないし、つまずいてばかりでスムーズにも引けていない。
曲になっているとは思えないできだけど、知っているように反応してくれたから分かってもらえたみたいだった。
「この曲は誕生日を祝う時の曲ですよね?テレビでやってました」
なんとかメロディを弾くことができて嬉しいはずなのに、浮かんできたのは違うもので胸が苦しくなる。
「でも明るい曲なのにどうしてなのか悲しい気持ちになります」
「悲しい、か……。おいで」
両手を少し広げて笑みを向けられてから知ったけど、私のこの複雑な気持ちを受け止めてくれているんだろう。
戸惑いながらゆっくりと胸に飛び込んでみるとまた体をぎゅっと抱きしめられた。
薄いシャツワンピースを着ているから掴まれている感触が肌に近い感じに伝わってくる。
でも触れられていて心地良いから、目を閉じてその優しいぬくもりに浸った。
「少しは落ち着いてきた?」

