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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……



「ちっ、違います」


口ではそう言えるけどボールペンを持った手を動かすことができない。


適当な文字でも書いて埋めたいところだけど、きっとすぐに見抜かれてしまいそうだ。



「書けないということは風子様はあのお約束のことはもうどうでもよくなったんですか?必要な書類にはサインいただくと書いておいたはずですが」


「えっ?それは……、えっと……」


一体、何のことなのかさっぱり分からない。


でも社さんの表情が硬いからその内容を聞き直してはいけないような気がして適当に返事することもできなかった。


「その方がこちらとしては都合がいいのでこれから風子様のご実家の方とお話させていただきます。元々そういうお約束でしたので。申し訳ありませんが今すぐ一緒にいらしてください」


サインをした数枚の書類をしまった社さんと目が合った瞬間、怖くなった私は後退りをした。


どうすればいいのかその場で迷っていると社さんは逃がさないと言わんばかりに腕を掴んでくる。


「いっ…、いやっ……」


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