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愛おしいキミに極甘な林檎を
第22章 幸運と四人目の男

「それは……、私だって早くそうなりたいです」
「なろうと思えばなれんだろ。塑羅緒だって見合いの話を断ってるくらいだから、早く結婚しねえと他の女にとられるぞ」
「…………」
見合いの話があったのは知らなかったけど、逃げていた現実に引き戻されて私の顔から笑みが消えた。
逃げても、逃げても現実が私たちを苦しめる……。
しょんぼりしている私を見ているのをやめた颯太はもう一度赤ん坊の様子を確認してから立ち上がった。
「そんじゃ、またな」
「はい」
「那砂さんによろしく言っておいてくれよ」
どうして那砂さん……!?
関わりがないと思っていた人の名前を聞いて驚き、私はそこでしばらく立ち止まっていた。
なぜ知っているのかすごく気になるのにベビーカーを押して歩いて行く颯太の後姿を見ていることしかできなかった。

