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第23章 婚姻届

これはまずい。早く取り消してもらわないと……。


「婚姻届を返してください。……郁哉さんとまだ結婚の話をしていないんです」


「わしが話をしてきた。郁哉くんは風子と結婚すると承諾してくれたぞ。婿に来ることも快く応じてくれたから安心するがいい」


「えっ……」



「良かったではないか。好きな男に理解されながら結婚ができて」


「ちょっと待ってください。一旦、この話はストップで」


「何か不満でもあるのか。破談するのであればまた見合いを考えておる」



「見合いは嫌ですけど……、その婚姻届は……」


「郁哉くんが今度来るのでな、その時に書いてもらうためにわしが預かっておく。ひ孫を楽しみにしているぞ」


名前を書いてしまった婚姻届を取り返せないまま祖父が和室を出ていく。

後をついて行った理人さんは結局ずっと黙ったままだった。