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愛おしいキミに極甘な林檎を
第31章 未来への誓い

うさぎの飾り切りをもう一つ作っている手を休めて、らしくないことを言い出すソラ先輩の方を見る。
視線を落として浮かない顔。
ここまで悄然としている姿を見たことはなかった。
フルーツナイフとりんごをテーブルに置いてから、座っていた椅子を前に引いて距離を縮めてソラ先輩の右手に触れる。
「もちろん一緒にいたいですよ。手が思うように使えなくてもソラ先輩はソラ先輩ですし、何も変わりありません」
「この右手がいつ全く動かなくなるか分からないし、今の仕事もできなくなるかもしれないんだよ」
いつもと違う弱気な一面を前に少しずつ胸の内がざわざわしてくる。
個室だからとても静かで沈黙の間ができると窓の外で降り続く雨の音が微かに聞こえてきた。
「実際、最近職場に行っても前のように仕事ができなくて足を引っ張るばかりだったんだ。……このままだと風子と一緒にいても生活を支えていけなくなる」
「きっと仕事が上手くいかないのも体調が悪いせいですよ。左手でも色々できるって言っていたでしょ?
でも、そこまでつらい思いをしていたことをどうして私に話してくれなかったんですか」

