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陰は陽よりも熱く
第2章 紅蓮の炎
まだ充分な力がついた訳じゃない。


強い結界を張れるのは自分の周り50メートルくらいが精一杯で、それ以上は綻びが生じてしまう。



小さく呪を唱えたり文庫本に見せかけた呪札を持ち歩いたりしながら張り直し、なんとか強度を保てて100メートル四方だ…



自宅や神社の敷地は張れても七葉の家までは届かない…

歯噛みしつつ結界の強度を高める努力を毎日していた



そんなある日



「おはよ~創護!」


登校中に後ろから声をかけてきたのは…七葉だった。



―――…っ



立ち止まっただけで振り返らずに先に進もうとすると周りこんで話しかけてきた。




小学校ではショートボブだった髪がセミロングになっている。



柔らかいそよ風に毛先が弾んで艶やかに踊った。



「おはよ~!まさか幼なじみの顔忘れちゃったとか言わないよね?」



阿呆がっ…!


「高校一緒だね、よろしく!」


七葉の数メートル先で結界の綻びから侵入しようとしてる小さな物の怪が目に入った。


くそっ…



「――どけ。俺の視界に入るな。」



突き放して言葉で斬りつける。



「なっ――!!なによっそれっ!あたしあんたになんかした!?
そんなこと言われる筋合いないけど?!」


俺には大ありだ…っすぐ取り憑かれる癖に



湧き上がる苛立ちを隠し冷淡に言い放つ



「目障りだ。存在が。」



煮えたぎる顔の七葉を尻目に囁くような呪を唱えると、結界から入れたことに小躍りしていた緑色の物の怪はもとの結界の歪みに吸い込まれて戻っていった。




高校が一緒なのは知ってる!

だから登下校中に蠢く物の怪を片っ端から倒して結界を張って…



くそっ…俺がここまでしていてもあいつに自覚がないならまた狙われ兼ねない…!




七葉が泣くのをみるのは御免だ



どうしたものか――



その日から別の策をとることにした。



午後の授業を全て受けてからでは時間が足りない。



教師には
「アレルギーのための耳鼻科通院」と嘘をついて早退

物の怪退治に専念した。


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