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陰は陽よりも熱く
第3章 埋もれていた想い
「これで、終わり…っと、結構早く終わったね!」


「ぁあ、おかげで助かった!
コーヒーはアイスとホットどっちがいい?」


「アイス!ミルクとシロップも~」


「ふ…わかった!ちょっと待っててくれ」



「はぁい♪」



ふ…って!
ふん、笑えばいいさ☆
アタシの今の幸せ度数の高さハンパないもんねっ


時々にやにやしながら資料作りしちゃったじゃないかっ

あんまり幸せ過ぎて落とし穴でもありそう…


関ッチとのコーヒータイムはアタシのここ数年間で一番幸せな一時になると信じて疑わなかった。









二籐のオーダーの甘いアイスコーヒーと自分のブラックを手に会議室へと向かう俺は悶々としていた。


二籐を可愛いときづいてしまってからこっち、特別ひいきしたりもしなかったつもりだけれど…


二籐の笑顔をみて緩んだ歯止めの脆弱さに危機感を覚えた。


このままじゃヤバい気がする…

生徒に手を出すなんて言語道断!

にもかかわらず自信がない…
全っ然ない――



誰か――俺の邪な心を砕いて下さい――





会議室の前の廊下から外を眺めると、

ボロボロの布切れを下半身にまとった毛むくじゃらのなにか

が、校舎の外壁を登って窓からニヤァリと笑った。




硬直する身体の脳髄に笑う鬼の声が木霊して聞こえた。


『手…出せばいいだろう――?
何を躊躇う――』




何を……いってる?

この、人ならざる者は―――


俺を誑かそうとしてるのか…っ…


『中の女はお前を求めて居るぞ…


お前も男として女を欲するなら簡単なことだ…なぁ…』




鬼の赤茶けた手が俺に向けて伸び、掌にある裂け目から紫色の目玉が覗き―――


目が遭った




『貪ってしまえよ…欲のままに――――』





ガチャリとドアが開いて、関ッチがコーヒーを運んできてくれた。




「…二籐…っこれ置いとくな、ゆっくり飲んでくれっ」


…?顔も見ずにコーヒーだけ置いてこうとしてる?



変だ


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