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陰は陽よりも熱く
第3章 埋もれていた想い
制服も直して振り返るとうなだれてる先生の背中が気になった。



「センセ…?……」


覗き込むと唇を噛みしめて瞼をぎゅっと閉じている。



チリッ

胸の奥になにか刺さったように感じた



滲む不安であたたかかった指先から熱が引いていく。



もしかして


「…後悔…してるの…?」



問いかけはすぐ打ち消された。

「違う!!…っ……ただ……情けないんだ………俺は――


蓮実……」


先生は優しくアタシの手を握りしめた

真剣な瞳で


「俺は教師失格で、こんなところでお前のヴァージン奪っちまうような情けない男だ……

けど…一時の気の迷いだけでこんなことはしない…っ!


……好きだ…っ…」



アタシの手を握る大きくてきれいな指に自分の指を絡ませた

「センセ……っ…うれしい……」



涙が溢れてくるのをみて、今度は優しく腕で包み込むように抱きしめてくれた



しあわせ…
言えないけど…
七葉に自慢したいくらいっ…



どうか夢じゃありませんように



温かい腕に包まれてこれ以上ないくらいに満たされていた。








――キャアアァ―!


甲高い悲鳴が幸せな空気を切り裂くように会議室の外から響く。



なに――…?



先生の背中に隠れながら会議室の外に出る。





窓にへばりついたモノに目を疑った。





赤黒い肌に関節が膨れ上がった細い手足


長くまばらな体毛のそれは蜘蛛のように窓を這いずりまわりこちらを見た。



人に近い顔立ちだが口は耳の近くまで横に裂けている。


黒一色の瞳が不気味に光りニタァっと笑う



『…――…ははぁ…うまかったろう…?
…欲のままに貪った女の味は……』

口の端から垂れてくる涎を腕でぬぐうと黒い頭の上にある角がきらりと反射した。




…――鬼――!



しかも一匹じゃない

見れば迫り来る夕闇の中にざっと見渡すだけで5、6匹いる


何故―――



近くの職員室からまた叫び声が上がる。

「ぁああ…っ…!
いゃあっ……っ!!やめてぇ」



『…そら…あっちでも…』



物の怪の毛深い指が指し示した方をみると、

校庭の隅で半裸にされた女生徒に群がる数人の男子生徒がみえる


首を横に振り抵抗する女生徒の乳房に吸い付き――まるで獣のようだ。



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