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陰は陽よりも熱く
第1章 木立ちに佇むもの
幼なじみ…


聞こえはいいけどこの場合は腐れ縁と呼ぶべきだっ


そう思うのには理由があった。

門倉 創護(かどくらそうご)



高校に進学してから幼なじみの創護が午後の授業を受けたのは何回かしかないのを七葉は知っていた。


…午後の授業の最中に毎回校門に向かって歩かれたら目に入るでしょお?
窓際の席だしっ…





七葉と創護は幼いころはよく一緒に遊び仲良くしていた。



創護の家は七葉の家の隣にある神社の宮司をしている。


社務所の隣に自宅が建っているのでいつも神社が遊び場だった。


二人で赤い鳥居の下の砂利を踏み鳴らしながら走り回ったり本殿の縁の下に潜り込んでかくれんぼをしたり…。




小学校最後の夏から創護は急によそよそしくなった。



七葉は遊び相手が減って寂しかった。

自分も思春期に入り女友達と過ごす方が楽しくなって来たのもあってそれ以来ほとんど話さなくなった。



創護は七葉だけでなく周囲を寄せ付けないようになっていた。



無表情が貼りついたように、感情を表に出さずにいる。



顔立ちは端正なだけに周りのクラスメートたちも近寄りがたく感じているらしかった。




実は先月、創護が同じ高校に通い始めたのを知った七葉は、登校途中の創護に何年かぶりに声をかけたのだ。




「おはよ~創護!」


後ろから声をかけられて一瞬足を止めた創護だが振り向きもせず歩きだした。



…あれ?聞こえてなかった?



今度は前に回り込んで声をかけてみた。


「おはよ~!まさか幼なじみの顔忘れちゃったとか言わないよね?」



「………。」


漆黒の髪は無造作ながらに艶があり、細い銀縁の四角い眼鏡が整った鼻筋をさらに強調している。
端正な長身の幼なじみに上から見下ろされて自分から声を掛けたのに少し戸惑った。


…ん?返事なし?

めげずに笑顔を向けた。

「高校一緒だね、よろしく!」


カバーのない文庫本を手にしたままゆっくりと近づいてくる。

開いた唇から響いたのは重低音ボイス。



「――どけ。俺の視界に入るな。」



――真っ白になった、途端に煮えくり返るような怒りがこみ上げる。
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