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陰は陽よりも熱く
第1章 木立ちに佇むもの
「っな――っ!何よそれっ!あたしあんたに何かした!?
そんなこと言われる筋合いないけど?!」



七葉の横をすり抜けてサッサと学校へ向かおうとする創護の腕をつかんだ。



「答えなさいよっ!!」


再び重低音が響く。

「目障りだ。存在が。」




眼鏡の奥の暗い瞳に揺らぐ強い眼光が冷たく射抜くように七葉を見下ろした。





七葉はその日以来創護を見かけても絶対に声を掛けないと誓っていた。



思い出すとまた沸々と怒りが湧いてくる。



「知るか!アイツのことなんてっ!」


「そんなこと言ってるけど~気になってるんじゃないの?
だって七葉くらいだよ?三階の教室の窓から後ろ姿だけで門倉見分けるの。」


授業も終わって蓮実と帰りながら創護の話をしていた。



「わかるでしょ?黒髪であんなデカいんだから。」

「やっだ七葉。デカい黒髪なら他のクラスにだっているよ!
私だって七葉の顔みて、あぁ門倉なんだ~って判別つけてんだから。

自覚が足りにゃいのね☆なのはたんはっ」


「ぇっ!違っ…ちょっと蓮実?!聞いてる?」

ふふんとからかいながら含み笑いでいる蓮実を追いかけながら帰宅した。






「ただいまぁ。」



「あぁお帰り七葉~ちょうど良かった!今メールしようとしたのよ。」



喪服に着替えて慌ててスマホを手にする母の姿があった。


「ぇ、なに?どしたの?」


「ママが通ってたフラワーアレンジメント教室の先生が亡くなったのよ~!お通夜に行って来るわね。たぶん遅くなると思うから、冷蔵庫の中のもの温めて食べててくれる?パパにはメールしたから!」



「うんわかった。気をつけてね。」



「はーい。いってきまぁす!」



お通夜になぜか元気に出掛ける母を見送る。

と、七葉のケータイが鳴った。


「パパだ。もしもし?」


『あぁ、七葉。ママ出かけちゃったか?』


「うん。今出たばっか。どしたの?」


『取引先とのトラブルでな。残業して事態の収集にあたれとさ。パパもかなり遅いから金太郎の世話頼んだぞ。」



「ん。わかった。じゃね。」






てことは、あたし一人か…



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