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陰は陽よりも熱く
第4章 金色の陽は
瞼を閉じて体温を感じとる


そっと背中に手を回すと、創護の腕に力が籠るのがわかった





抱きしめられることの幸せをうっとりと実感していると創護の背中から人型に切られた紙人形がヒラヒラと目の前に飛び出してきた



気づいてきょとんと眺めていると、その紙人形は二人に見えるようにぱたぱたとはためき気づいて貰おうとしている。



「……ねぇ、…創護…」



ぽんぽんと背中を叩き空中で激しく踊る紙を指差した。



名残惜しげに離れた創護は憮然として紙人形に呼びかけた


『蝶氷』


呼応するように震え膨らんだ紙人形は黒いスーツの女性に姿を変えた。




あ…あの時の美脚のお姉さん…



じろりと七葉を一睨みした蝶氷は創護に駆けより跪く。


『主様……お急ぎをっ…結界内に邪魅の群が入り込んで…

憑かれた人間が奇行に走っております……』





「…邪魅…か…、…わかった。戻れ…」


手をいつものように差し伸べると蝶氷は口元に冷笑を浮かべて首を横に振る。



『…いいえ主様…この蝶氷、引き際は心得ておりますわ。

心に決めた方がおいでの時にまで胸の中で消えたいなどと我を通したりしません。
…では…」




にっこりと微笑みを残し、無数の蝶になって空高くまいあがった




「…七葉、口を閉じろ」


ポケットから黄色い札を取り出した創護は左手の親指に歯を立てて指先に一粒血を滲ませる。


その血で何やら文字を札に書き入れ息を吹きかける。


「持ってろ」


七葉の掌に握らせた

「?」


「呪がかけてある…この札を持っていれば、お前が声を出さない限り俺以外の人間にも物の怪からもお前が見えない」


札を握った七葉の手首を掴んで耳元でさらに念を押した。


「邪魅は人から人へ飛び移っては欲望に漬け込み魂を喰らう鬼だ。
そそのかされた人間は欲望を剥き出しに襲いかかることもある…

絶対に声を立てるな
何を見ても、だ。」


頷く七葉の少し怯えた表情を見て取ると僅かに口元を弛ませた。



笑っ…た…?



どこか穏やかに見える横顔を見ながら内側から湧き出る温かな喜びに顔が自然とほころぶ。


一方は繋いだ手首の力強さに頬を染め、一方はその柔らかな手首に守りぬく思いを強くしながら二人で駆けた。
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