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陰は陽よりも熱く
第4章 金色の陽は
視界が暗い
夕暮れ時だということを差し引いても異様に暗く感じた。



これも変な生き物の仕業なのかな…


そんなことを考えながら創護を見ると駆けながらだというのに少しも震えぬ声で説明してくれた。




「障気…黒い霧のようになっているな、物の怪が発する力によって濃さが変わる。
奴らの数が多いだけあってお前にもわかるか…」




ゴクリと唾を飲み込みながら頷いた。


校門前に差し掛かり辺りの暗さが更に増す。




創護の目には噴き出す黒い霧の根源がしっかりと捉えられていた。




飛び跳ねるように木々を移動するもの、校舎の外壁に這うもの
十匹は超えるだろうか




踏み入れた校庭の木陰から悲鳴が響いてとっさに七葉は振り返る


「――ひぃっ…―ぃやぁああ!!――」



―――っ…!!



出せない声の代わりに息を飲む。


目に飛び込んできたのは男子生徒数名に組み敷かれて陵辱される女生徒の姿だった。



――…テニス部の梓先輩…っ!



美人だと評判の運動部のマドンナは制服をぼろぼろに切り裂かれ、露わにされた白い肌と艶やかな髪の毛を土で汚し泣きじゃくりながら悲鳴をあげていた。



群がる男子生徒達の目は虚ろながらも血走り、見開かれてギラギラと光っていた。

口元を獣のように涎で汚しながら目の前の女の乳房に食らいつく。
皆、反り返った欲望を露わにして次々と襲いかかる。







七葉の顔から血の気が引いて口元を押さえた指先が震えてくる。




ガサリと真上の木の枝が揺れて舌なめずりをする異形のものが顔を覗かせた。



邪な瞳に誑かされた人間たちの欲望に堕ちる様を眺めながら魂の熟れ具合を待っているようだった。



目の前の悪夢にカタカタと震えている七葉の唇からは今にも悲鳴が飛び出してしまいそうだった。



その肩を引き寄せて自分の胸で視界を遮りしばし残酷な現実から目を背けられるようにした。



―――…っ…!こんなっ…の、ひどすぎる…!!


恐ろしさと嫌悪感で吐き気がする



そんな様子を見て取り、背中と膝裏をすくい上げるように抱き上げた創護が七葉の瞳を真っ直ぐ見て言った。



「元凶どもはすぐに根絶やしにしてやる。

掴まってろ」



お姫様抱っこされたまま言われ一瞬震えが治まる。
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