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陰は陽よりも熱く
第4章 金色の陽は
パチン―――



金糸を振りまききった金色の獣に指先を鳴らして合図を送る。



ブルルル



麟が合図に応えるように嘶くと邪魅の周りに出来たまばゆい壁がぎゅっと縮み、まとめて縛り上げた。





ギィィッ――!



苦痛に顔を歪めた赤茶けた鬼たちを見ていて気づいた。




一匹足りない





先ほどまで息巻いていた饒舌な邪魅の姿がない。




びゅっと風が鳴る音と同時に開いてはならない唇が叫んだ。



「――ッ!危ないっ上!!」


七葉は知らせながらも次に来る衝撃を予想して目を閉じた。



ゴキッ


関節が外れるような音







次に響いたのは低い溜め息と舌打ちだった。


おそるおそる瞼を開ける



そこには左手で邪魅の喉元を掴み締めている創護の姿があった。




振り返りながらも手の甲とこめかみに青筋を立てて睨む姿は物の怪よりも恐ろしい



「俺の言ったことを――聞いて無かったのか?」



ギリギリと締まる手に白目を剥いた邪魅がブクブクと口から泡を吹いている。




「…ぅ……ごめん…っ…」



神妙にならざるを得ない
危険を知らせようとつい叫んで呪が解けてしまった…が

どうやら創護にはいらぬ世話だったらしい。



「こんなことでやられるかっ――阿呆!」



失神している邪魅を金糸に縛り上げられた群の中に放り投げた。




両手をパンッと打ち鳴らし、直ぐさま指先で空中を縦横に切り唱える



『青龍、白虎、朱雀、玄武、勾陳、南寿、北斗、三台、玉如
我が式を以て悪しき身、魂魄微塵に切って晴らせ
――急急如律令!』


横から駆け出した麟が嘶くとその額に鋭利な角が隆起し、縛り上げられた邪魅の上から振り下ろされる



目のくらむ閃光とともに邪魅の群は光る塵となって消えた。



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