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陰は陽よりも熱く
第1章 木立ちに佇むもの
怒鳴る創護は七葉の腕を掴み自分の後ろに放り投げる。






少女の形相は更に歪み獣に近い雄叫びをあげた。




「見ろ、化けの皮が剥がれる――」



少女の姿が二つに裂け中からは…



「いっ――っやぁっ!ムリムリムリ!!こっち来ないで―っ!!」



巨大な幼虫の出現で七葉は絶叫し尻餅をついたまま後ずさりした。




怯む人の様子にギシギシと歯を鳴らした幼虫が退化した目をこちらに向けた。


「少し黙ってろ!」
眉間にシワを刻みながら瞼を閉じて、呼ぶ


『篝火』


舞いながらひらひらと飛んできた橙色の札が空中で止まり蒼く発火した。


創護は続けて長い指先で空を切り声を大僧正の如く荘厳に響かせた。


『――清めの炎を以て闇に帰せ――急急如律令!』



声に反応した蒼い炎はまっすぐ、人ほどもある大きな虫目掛けて矢のように飛んで行った。



ッギイィィ――!!


突進しかけた虫の中心に燃える矢が突き刺さり一気に炎に包まれた。


時折碧がかった発光体を飛ばしながら炎は段々とその範囲を狭め、ついに消失した。


白い煙の中から一匹の蝉が飛び立つ



「ぁ…あれ…?」



「怨念の集合体だったからな、木の下にいた少女の地縛霊ごと幼虫のうちに取り込まれたんだろう…」


「そか…やっと羽化できたんだね…」



夢に出てきたあの子はこれで天国にいけたのかな…


「…もっとおんぶしててあげれば良かったかな…」




「どうでもいいが、いい加減に離れろ」

いつの間にか七葉は創護の片脚にがっちりとしがみついていた。



「はは…いや、あのね立てなくて…」



七葉の手は今更ながらにブルブルと震えてきた。



深いため息を一つついた創護がしゃがみこんであたしの顔を睨みつけた。

近づく漆黒の瞳に思わずどきっとさせられる



「七葉」


「…っなによ…」


…なんで急に名前なのっ!


「ド阿呆が、俺の視界に入った途端にこれだ…っ!今日限り一切なにがあっても知らんからな」



返事をする前に創護はくるりと背を向けた。


…へ…?

「乗れ、阿呆」


おんぶ…してくれちゃうんだ…視界に入れたくない存在が目障りなあたしを…?
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