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アルルの夜に始まる恋
第2章 アルルの夜
帰り道、ワインを飲んだ小夜は少し陽気だった。

「夫婦に間違えられちゃったわね」
「嫌だった?」

小夜はううんと首を横に振った。

「あなたみたいな素敵な人と夫婦に間違えられて嫌な女性なんていないわ」

小夜は少し寂しそうに言った。

「・・・君は・・・恋人がいるの?」

小夜は地面に落としていた視線をロイに向けた。
そして、また首を横に振る。

「今はいないわ。少し前まではいたけど・・・」

ロイはそう、と小さく答えた。

「あなたは?」

小夜が尋ねる。

ロイはいないよと答えた。実際には特定の恋人はいないにしても、デートする相手は沢山いるのだが、正直にそう話すのはさすがに控えた。

それでも小夜は察しているらしく、ふふふとまた笑った。

「いないはずないわね。きっとあなたの本命になりたがってる女性は世界中にいるんだわ」

そう言って黙り込んでしまった。ロイは返す言葉もなく、同じく無言で歩いた。

夜空を見上げると、星が瞬いているのが見える。
ゴッホも何度となく見上げたに違いない。
あんな夜空が描ける画家はそういないだろうとロイは思った。

小夜も夜空を見上げる。
二人して同じ気持ちなのが伝わる。
アルルの夜空を見るだけでも、ここに来る価値はあるとロイは思った。
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