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アルルの夜に始まる恋
第2章 アルルの夜
「私、むなしいなと思ったけど、悲しくて泣いたりしなかった。もちろんもう一度やり直したいとも思わなかった。フランスに来たのは・・・」
「来たのは?」
小夜はロイの目をじっと見つめた。
「あなたのような人にこんな話するのは、とても恥ずかしいんだけど・・・」
そう言って、小夜はフランスに行こうと思った経緯を話してくれた。
小夜は父親と二人で暮らしていた。母親は小夜が小さい時に家を出ていき、消息不明だった。
小夜が大学に入ってすぐ、小夜の父が勤めていた会社が大規模なリストラを行い、小夜の父は急遽職を失った。
社宅も追い出され、ドラマに出てきそうな古いアパートで暮らし始めた。
大学も一年通うことなく退学した。
父の歳で再就職は難しかった。
せっかく見つけた掃除やスーパーの仕事も、大手企業に勤めていた父のちっぽけなプライドが邪魔し、長く続かなかった。
財産を株や先物取引に費やし、借金だけが増えていった。
当然、そのしわ寄せが小夜にやってくる。
小夜は小さな運送会社の事務員として働き始め、少ない給料をもらいながら借金返済に追われる生活だった。
それでもまた父親は借金をしてくる。
その繰り返しだった。
そんな父を見かねて、昔からの友人の女性が仕事を斡旋し、事務仕事に就かせてくれた。
それから父はギャンブルを止め、借金もしなくなった。
アパートを出て、普通のマンションに引っ越すこともできた。
二人で力を合わせて借金も全て返したのだという。
「借金もなくなって、父もその女性と再婚したの。・・・私、やっと解放されて、なんだか気が抜けちゃって・・・。それまで、ずっと何かに縛られているように生きてきたから・・・」
「それで、今度は自分のために生きようと思ったんだね?」
うんと小夜は頷いた。
「来たのは?」
小夜はロイの目をじっと見つめた。
「あなたのような人にこんな話するのは、とても恥ずかしいんだけど・・・」
そう言って、小夜はフランスに行こうと思った経緯を話してくれた。
小夜は父親と二人で暮らしていた。母親は小夜が小さい時に家を出ていき、消息不明だった。
小夜が大学に入ってすぐ、小夜の父が勤めていた会社が大規模なリストラを行い、小夜の父は急遽職を失った。
社宅も追い出され、ドラマに出てきそうな古いアパートで暮らし始めた。
大学も一年通うことなく退学した。
父の歳で再就職は難しかった。
せっかく見つけた掃除やスーパーの仕事も、大手企業に勤めていた父のちっぽけなプライドが邪魔し、長く続かなかった。
財産を株や先物取引に費やし、借金だけが増えていった。
当然、そのしわ寄せが小夜にやってくる。
小夜は小さな運送会社の事務員として働き始め、少ない給料をもらいながら借金返済に追われる生活だった。
それでもまた父親は借金をしてくる。
その繰り返しだった。
そんな父を見かねて、昔からの友人の女性が仕事を斡旋し、事務仕事に就かせてくれた。
それから父はギャンブルを止め、借金もしなくなった。
アパートを出て、普通のマンションに引っ越すこともできた。
二人で力を合わせて借金も全て返したのだという。
「借金もなくなって、父もその女性と再婚したの。・・・私、やっと解放されて、なんだか気が抜けちゃって・・・。それまで、ずっと何かに縛られているように生きてきたから・・・」
「それで、今度は自分のために生きようと思ったんだね?」
うんと小夜は頷いた。