この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
アルルの夜に始まる恋
第2章 アルルの夜
「うちにね、『夜のカフェテラス』のポスターがあったの。ちゃんと額縁に入って。父は言わなかったけど、母が好きな絵だったみたい。
古いアパートにもそれは持っていった。もうね、ぼろぼろのアパートだから、あの絵がすごく鮮やかに見えた。そこだけまるで別世界なのね。カフェのオレンジ色が眩しくて・・・。
でも、その時はそこに行きたいとは思ってなかった」

ロイが小夜のグラスにワインを注いだ。
ありがとうと小さく言って、代わりにチーズをフォークに刺してロイに渡した。

「父が再婚して、マンションを出ていった夜に、あの絵を持っていってないことに気がついたの。
ああ、父は過去を捨てて、あの人と人生をやり直したのね・・・と思ったら急に、私はなんでここにいるのかしらって思えてきて。彼ともあんな風に別れて、それまでの人生が急に色あせて見えて・・・。
次の日には会社を辞めるって言って、旅行会社に駆け込んだの。
仕事の引継ぎでバタバタして出発したから、何の下調べもしなかった。だからあのカフェが現存するのも知らなかった」
「すごい衝動に駆られたんだね」

『衝動』とう単語がわからず、小夜は首をかしげた。
ロイは’目に見えない力に動かされた’と言い換えた。
小夜が頷く。

「あの絵が描かれた場所に行きたい!って思った。ずっと別世界だと思っていた空間に行って、現実として感じたかった。なんていうか・・・手に届かないものではないって、思いたかったのね。」

ロイは頷いた。

「どうだった?現実として感じた感想は?」
「うん・・・・。あぁ、あのぼろぼろのアパートとアルルは繋がっていたんだわって思った。
上手く言えないけど・・・あの侘しい生活があったからこそアルルに憧れたわけで、あの絵が私をアルルに来させたのねって」
「そう・・・。君にとってはフランスに来ることはただ単に’旅行’ではなかったんだね。
フランスに来るということは、君が今までの自分を脱ぎ捨てて、新しい世界に飛び込むことを意味していたんだ。飛行機に乗って、入国審査をして、パリの街を歩いて・・・店でワインを買って。そういう段階を踏むことで、徐々に日本での自分を脱ぎ捨てたんだ。一枚ずつ服を脱ぐように」

ロイがそう言うと、小夜は驚いた顔でロイを見つめた。

/45ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ