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アルルの夜に始まる恋
第3章 パリの小さな夜
「あなた・・・本当に日本人が好きね」

日本人とは一言も言っていないのだが、リサにはすぐわかったようだった。

「君が思っているような関係じゃないよ」

ロイは早くリサの元から離れたかった。
この気の強いお嬢様は何を言うかわかったものではない。

「・・・私にはわからないわ。日本人の女の子なんて、世界で一番魅力がないと思うけど。無宗教だし、愛国心もなければ教養もないし、礼儀もなってないわ。アメリカの首都がニューヨークだなんて平気な顔で言うのよ?パリのブティックや、ウィーンのザッハにスニーカーとジーンズで入るような礼儀知らずだし。へたくそなフランス語でパリジェンヌに話しかけて無視されてるのにヘラヘラ笑っちゃって見てて恥ずかしいったら」

リサはわざと小夜にわかりやすいようにゆっくりと話した。

「リサ、やめないか」
「ああ、一ついい所があるわね。男性にとってだけど。すぐ’ride’させてくれることね」
「リサ!いい加減にしろ!それ以上言ったら君を軽蔑する」

ロイは怒りを露にしてリサに詰め寄った。
リサは左の眉をあげ、フンと鼻を鳴らした。

「私はあなたと喧嘩するためにパリに来たんじゃないわ。どいてちょうだい。日本人の近くにいると気分が悪くなるわ」

リサはロイを押しのけて立ち去ろうとしたが、ピタと立ち止まり、小夜に向き直った。

「ロイは優しいから、勘違いしちゃだめよ。彼は女性に優しくするように『躾られて』るだけ。
もったいぶらずにお礼に一晩お相手するぐらいしたらいいわ。もちろん、彼があなたに魅力を感じていればの話だけど」

言いたいことだけ言うと、さっさとホテルを出ていってしまった。

小夜は身動きできず、立ち尽くしていた。
ロイは慌てて小夜に近寄る。

「小夜、どうか気にしないで。彼女は時々ああやってわざと人を傷つけるんだ」

リサは以前、仕事でもプライベートでも日本人相手にプライドを傷つけられたことがあった。
それ以来日本人を毛嫌いしていて、日本人と付き合いのある人間も侮蔑するようになっていた。

小夜はロイを見上げ、悲しそうに笑った。

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