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第3章 パリの小さな夜

こぢんまりとした美容室は、あきらかに一般人は入れないといった雰囲気で、来ている客は皆高級な服を身に纏っている。
それぞれの椅子は半個室になっている。

「ロイ・・・あの・・・」

小夜は明らかにうろたえ、どうしたらいいのかわからないとロイに救いを求めるような目をした。
ロイは笑って店員に言った。

「彼女をとびきりのレディにして欲しいんだ」

店員は小夜のコートを受け取り、お任せくださいと言って不安気な小夜を連れていった。

ロイは携帯を取り出し、友人に電話をかけた。

「今日もそちらには行けそうにない」

友人は呆れたような口調で答えた。

「君は一体パリに何しに来たんだい？」

ロイは笑ってごめんと謝った。

「女か？そうなんだろ？」

友人がいじわるそうに前回と同じ質問をする。

「そうさ」

友人はヒュゥと口笛を吹いた。

「うらやましいね。君がそんなに夢中になるなんてよほどの女性なんだろうな。今度紹介してくれよ」
「ああ、そうだね」

そう言って電話を切った。

パリに何しに来たのか？

小夜に会うためだったのかと思わせるほど、彼女に魅力を感じていることに気がついた・・・。