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アルルの夜に始まる恋
第3章 パリの小さな夜
「国民性は全く違うね。観光客に対する態度に限っていえば真逆だよ。パリでは冷たい思いをさんざんしただろ?店員の態度は横柄だし、英語で話しかけてもわざとフランス語で返すし。ロンドンではみんな親切だよ」
「やっぱり紳士淑女の国なのね。・・・・あなたみたいに」
「そう。ぼくみたいに」

ふふ・・・・と微笑み合う。

「でも、イギリスも良いところばかりじゃない。あたりまえだけど」
「そうなんでしょうね。行ってみないとわからないことがあるって、今回の旅で思い知ったわ。いろいろな面を知るのも旅の醍醐味ね」
「・・・行ってみたい?ロンドンに」

ロイは真面目な顔で尋ねた。
小夜は少しどきりとした表情をして、首を横に振った。

「いつかは・・・行ってみたいけど、今の私には今回のこの旅だけで充分」

ロイは小さくため息をついた。
行きたいと言ったら、迷わず連れていく気だった。
ロイはずっと感じていた。

小夜は自分のことを決して嫌いではないことはわかっていた。
しかし、ロイの普通でない身分に距離を感じて、踏み込んではこない。
当然、明日日本に帰って終わりにするつもりだから、距離を詰める気などないのだ。

ロイ自身焦れていた。

果たして自分はどこまで彼女を必要としているのか・・・。

このまま日本に帰したくない。
しかし、その先どうする?

一時の気分で彼女を無理やり自分のものにして、彼女の人生を狂わせることになったら・・・?
このまま日本に帰って、いい思い出として終わったほうがいいのでは・・・?

答えは出ない。二人ともそれはわかっていた。

距離を縮めたいのに、躊躇している。

痛いほど伝わってくる。
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