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アルルの夜に始まる恋
第3章 パリの小さな夜
「あなたと、あの時出会って・・・おかげでこんなに素敵な時が過ごせて・・・感謝の気持ちでいっぱいだわ。一人で途方に暮れていた時のことを考えると・・・」

小夜は先を続けることが出来なかった。
ハタハタと涙がこぼれる。

「小夜・・・」
「本当に夢みたいな時間だった。夢から覚めるのが・・・少し悲しい」

うつむくと、更に涙があふれ出て地面に落ちた。

ロイは小夜を抱きしめた。
小夜は抑えきれないといったように体を震わせてロイの腕の中で泣いた。

(小夜・・・小夜・・・!)

ロイは激しい想いが溢れてくるのを感じた。
体を少し離して、小夜の顔を覗き込む。

「まだ・・・夢から覚めるのは早いよ」

そう言ってそっと小夜の唇にキスした。

「・・・もう一つ、日本語を思い出したよ。『キスしたい』だ」

小夜は少し驚いて、またいつものようにふふふと笑った。

「もうしたじゃない」
「ウィ?ノン?」

小夜は涙を拭いてロイを見上げると、返事の代わりにそっと目を閉じた。

ロイはもう一度小夜の冷たい唇に唇を重ねた。

抱きしめあって優しく唇を重ねる二人を、エッフェル塔の光が包み込むように照らした。
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