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アルルの夜に始まる恋
第3章 パリの小さな夜
ホテルに戻ると、シャンパンが運ばれていた。

窓辺に立ち、パリの街を眺める小夜にロイはシャンパンを注いだグラスを渡した。

二人とも無言でグラスを鳴らす。

冷たいシャンパンが喉を通る。高級なものに違いないが、ロイは胸の苦しさに気を取られ、味がよくわからなかった。

小夜は忘れたくないといった様子で、夜のパリを食い入るように見つめていた。

その横顔は寂しそうで、しかし、最初に出会った時のようなか弱い印象ではなく、どことなく力強さを感じさせる表情だった。

ロイは小夜の頬にキスした。

二人はまるで最初からそうあるべきだといった風に、自然と抱き合い、唇を重ねた。

小夜の手からグラスを取り、グラスをテーブルに置く。

ロイは小夜の手の甲にキスした。

細く冷たい小夜の指を優しく撫で、肩に向かって腕にキスした。
小夜の細く白い肩を手で包み、首筋にそっと唇を押し当てる。

小夜がわずかに肩を揺らした。

ロイは肩から首筋に沿ってゆっくりと指を滑らせ、小夜の頬を両手で包み込んだ。
小夜は今にも泣きそうな、不安そうな黒い目でロイを見上げた。

ロイは小夜の唇にキスし、ゆっくりと小夜の唇を味わった。
シャンパンの味がロイに届く。
さっきよりもずっと美味しく感じる。

唇を離すと、小夜は消え入りそうな声で言った。

「ロイ・・・これだけは信じてほしいの・・・」
「・・・何?」

ロイは鼻先で小夜の鼻先を撫でた。

「私・・・誰にでもすぐに・・・その・・・許すわけじゃ・・・」

ポツリポツリと、真剣な眼差しで話す小夜を見て、ロイは胸が締め付けられた。

リサに言われたことを気にしているのだ。
健気な小夜をまっすぐ見つめて、ロイは囁いた。

「わかってるよ・・・」

ロイがドレスのファスナーに手をかける。ジジジ・・・と音をたてて降ろされた。

「あの・・・!」

小夜が先ほどとは少し違う、慌てた様子で声を上げた。
ロイは苦笑して手を止めた。

「何?やめたいなんて酷なこと言わないでくれよ」
「そうじゃなくて・・・。あの・・・さっきのブティックで・・・」

小夜は急にもじもじとして顔を赤らめた。

「どうしたの?」
「あなたにいつもお世話になってるからって、プレゼントしてくれたの。その・・・下着を・・・」

ロイは、ああ、と頷いた。

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