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君の瞳に映る白い花【おまけ追加しました】
第3章 揺れる枝葉
顔色の悪い冬子を見て、長身の女は意地悪そうな笑みを浮かべた。

「私たち以外にも何人かいまして・・・・。まあ、みんなで悠を’共有’してるとでもいいましょうか」
「みんな分け隔てなく~なんだけど、悠は私のこと一番好きって言ってくれた♪」

若い女性は両頬を手でおさえ、わざとぶりっこを装って言った。

「あら、昨日は私に同じこと言ってましたよ」

長身の女性がそういうと、若い女性はフン!と言ってトイレに入っていった。

冬子の身体はショックで凍りついた。

「・・・・こうやって重なった時は’順番を待つ’か、’一緒に済ませる’、というのがルールです。あなたもここで待ちますか?」

冬子は無意識のうちに封筒を強く握り締めていた。ハッとして力をゆるめる。

「私は・・・・これを悠に届けにきただけです」

女性が封筒を持つ冬子の手にそっと触れた。
わずかに触れただけだが、冬子は何か嫌なものを感じてすぐに手を引っ込めた。

「渡しておきますけど?」
「いえ・・・・。いえ、大事なものなので、直接渡します」

若い女性がトイレから出てきて、冬子に言った。

「ねえ、そんなとこにいないでさ。あがって、悠の昔話とか聞かせてよ!」

まるで自分の家かのような振る舞いに、冬子はここは本当に悠の部屋なのだろうかという変な錯覚を覚えた。

「ごめんなさい、失礼します」

冬子は頭を下げると、何かから逃げるように走り出してその場を去った。

(どうか、どうか悠と顔を合わせませんように・・・・・!)

冬子は神に祈る気持ちで走った。エレベーターを待たず階段を駆け下りる。

冷たい空気が肺に入り込み、冬子はぜーぜーと息を切らせながら無我夢中で走った。

辛かった。

悠が今も女性たちをマンションに入れてること。
おそらく身体の関係があること。
そして何より、彼女たちに『好きだ』と伝えていること・・・・・。

冬子は泣き出しそうなのをぐっと堪えた。

やはり自分には無理なのだ。悠と結婚するなんてことは。
こんな気持ちに向き合っていかなくてはいけないのだと思うと、耐えられそうになかった。

どうやって自分の家に戻ってきたのかわからないほど、冬子の意識はどこかに飛んでいた。

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