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君の瞳に映る白い花【おまけ追加しました】
第3章 揺れる枝葉
「ありがとうございました」

冬子は運転席にいる同僚の男性にお礼を言った。

「あのさ・・・・三沢さん、今度は二人で食事行ってくれる?」
「はあ・・・・でも、あの・・・・・」

職場のメンバーで食事会をした帰り、この男性は冬子を送ると言ってくれたのでお言葉に甘えさせてもらった。
この男性は結婚しているのだが、どうやら冬子ともっと深い関係になりたいと思っているらしかった。

「ごめんなさい。結婚している方とはちょっと・・・・・」
「いや、ぼくね、最近妻とうまくいってなくて」
「ごめんなさい、ありがとうございました」

冬子は言葉をさえぎって車を降りた。
こういう時、冬子は臆することなくきっぱりと断ることができる。

男性は馬鹿にされたといった様子で顔を赤くして冬子を睨むと、車を急発進させて去っていった。

(結婚してるのに、なぜ他の女を誘うかな・・・・・)

冬子は胃にむかつきを感じながら門をガラガラと開けた。

「おせーよ、馬鹿」

顔を上げると、悠が冬子の部屋の前に座っているのが見えた。
平日だというのに私服姿だった。

「・・・・・仕事は?」

冬子はバッグの中の鍵を探すために目を伏せた。

「誰かさんが全然会ってくれないので、早くあがらせてもらって待ち伏せしてたんですー」

冬子はあれ以来悠を避けていた。
電話やメールはことごとく無視した。悠の方も仕事が相変わらず忙しく、家に来ることはめったになかったが、来た時は居留守を使ったり、寝たふりをしてやりすごした。

冬子は悠の顔が見れなかった。それでもいつまでもこうして逃げているわけにはいかないとわかっていたので、悠を家にあげることにした。

「・・・・誰だよ、今の男」

悠は冬子の背中に向かって尋ねた。
冬子は部屋の鍵を開けながら答える。今日は母の美代は友人と温泉に行っていないのだ。

「職場の人だよ。食事会があって、送ってもらっただけ」

ドアを開けてヒーターをつける。悠はどのくらいああして待っていたのだろう。
かなり身体が冷えてるはずだ。
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