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君の瞳に映る白い花【おまけ追加しました】
第3章 揺れる枝葉
確かに悠みたいな男性は迂闊に結婚しようなどとは言わないだろう。結婚するかどうか本当のところわからないけど、いつか結婚しようねと相手に期待を持たせるようなことはしない。そんなことをして後々あれは何だったのだと攻められることを恐れているのだ。

「好きでもない女と結婚したいなんて言わないだろ、普通」

悠は呆れた様子で言った。何をくだらないことを言ってるのだという調子だった。

冬子の中に怒りの感情が芽生えた。
それは生まれて初めてても言っていいほどの激昂だった。

「・・・・普通じゃない」

コタツの上にあった両手を握り締めた。
悠はそれを見て冬子がいつもと違うことに気がつく。

「冬子・・・・?」
「普通じゃないから、こんなに悩んでるんじゃない!」

冬子は落ち着くためゆっくり息を吐いた。

「私が・・・・’男女の好き’なんていう感情を持つようになる前から、悠のまわりにはたくさん女の子がいて、ただ近くに住んでるってだけで石投げられたり靴隠されたり、この家から出て行けとか死ねとか言われた。

私は悠のこと好きになっちゃいけないんだって。好きじゃない今でもこんなことされるなら、好きになっちゃったらどうなるんだろうってずごく怖かった」

悠は初めて聞く冬子の告白に衝撃を受けているようだった。
冬子が悠目当ての女の子にどれだけ嫌がらせを受けていたのか、悠は知らなかった。

「それだけじゃない。悠と何かあったら、お母さんと私はここから出ていかなくちゃいけないんだと思ったら・・・・・」

冬子は母の名前を出して、とうとう涙を堪えていられなくなり、言葉を詰まらせた。

悠のファンに嫌がらせを受けていることを冬子は母に言わなかった。
石がおでこにぶつかり、血が出た時も転んだと言った。
母がそのことでここを出ていこうと言い出すことを恐れたからだ。

ここを出ても、行くところなどないのだから・・・・。

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