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月夜の迷子たち
第7章 忍び寄る闇
「お母様からお電話です」
紗奈は凍りついた。藤原の言っていることがすぐに頭に入ってこなかった。
「母・・・・・ですか・・・・・?」
「須藤明日香様です。お繋ぎしてよろしいでしょうか?」
「あ・・・・・は、はい・・・・・」
紗奈は口では了解したものの、全く心がついていっていなかった。
(なぜ・・・・・なぜあの人にこの場所が・・・・・)
耕太が言うとは思えなかった。紗奈を引き取る時に二度と連絡してくるなと大喧嘩して以来、一度も連絡はこなかったし、こちらからもしなかった。
紗奈が長瀞のコテージにいることも知らないはずで、ましてやこの家で住み込みで働いていることを知っているのは明らかにおかしかった。
「もしもし、紗奈?」
何年ぶりかに聞く母の声は、記憶にあるものと違ってしゃがれて低かった。
受話器を持つ手が小刻みに震える。紗奈は両手でギュッと握りしめた。
「久しぶり。元気にしてた?」
母は、まるで普通の親子が数日ぶりに電話で話すかのような軽い口調で話しかける。
「・・・・・ご用件は何でしょうか」
紗奈は落ち着けと自分に言い聞かせて口を開いた。
「何よそれ。久しぶりに話すってのに、相変わらず愛想のない子ね」
「用がなければ切ります」
紗奈はすぐにでも電話を切りたかった。
母は慌てて切らないで!と声をあげる。
「あなた、今中園グループの社長さんのお宅で働いてるんですって?凄いじゃない!しかも次男と結婚間近だなんて!」
紗奈の心は乱れに乱れていたが、必死に冷静さを保とうとした。
「・・・・・結婚の予定なんてありません。そもそも私がどこで何をしようと、あなたには関係ありません」
「関係ないなんて、酷いこと言う子ね。あなたって昔からそう。母親の私を見下して馬鹿にして。そういうとこあなたの父親にそっくり。たいした稼ぎもないのにいっつも偉そうにして」
いつ自分が見下したり馬鹿にしたりしたというのか。紗奈は反論したい気持ちをぐっと堪えた。
紗奈は凍りついた。藤原の言っていることがすぐに頭に入ってこなかった。
「母・・・・・ですか・・・・・?」
「須藤明日香様です。お繋ぎしてよろしいでしょうか?」
「あ・・・・・は、はい・・・・・」
紗奈は口では了解したものの、全く心がついていっていなかった。
(なぜ・・・・・なぜあの人にこの場所が・・・・・)
耕太が言うとは思えなかった。紗奈を引き取る時に二度と連絡してくるなと大喧嘩して以来、一度も連絡はこなかったし、こちらからもしなかった。
紗奈が長瀞のコテージにいることも知らないはずで、ましてやこの家で住み込みで働いていることを知っているのは明らかにおかしかった。
「もしもし、紗奈?」
何年ぶりかに聞く母の声は、記憶にあるものと違ってしゃがれて低かった。
受話器を持つ手が小刻みに震える。紗奈は両手でギュッと握りしめた。
「久しぶり。元気にしてた?」
母は、まるで普通の親子が数日ぶりに電話で話すかのような軽い口調で話しかける。
「・・・・・ご用件は何でしょうか」
紗奈は落ち着けと自分に言い聞かせて口を開いた。
「何よそれ。久しぶりに話すってのに、相変わらず愛想のない子ね」
「用がなければ切ります」
紗奈はすぐにでも電話を切りたかった。
母は慌てて切らないで!と声をあげる。
「あなた、今中園グループの社長さんのお宅で働いてるんですって?凄いじゃない!しかも次男と結婚間近だなんて!」
紗奈の心は乱れに乱れていたが、必死に冷静さを保とうとした。
「・・・・・結婚の予定なんてありません。そもそも私がどこで何をしようと、あなたには関係ありません」
「関係ないなんて、酷いこと言う子ね。あなたって昔からそう。母親の私を見下して馬鹿にして。そういうとこあなたの父親にそっくり。たいした稼ぎもないのにいっつも偉そうにして」
いつ自分が見下したり馬鹿にしたりしたというのか。紗奈は反論したい気持ちをぐっと堪えた。