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月夜の迷子たち
第7章 忍び寄る闇
玄関まで来ると藤原に会った。

「いかがなされましたか?」
「すみません、急用が出来て長瀞に帰ることになりました。小野瀬さんによろしくお伝えください。荷物も梱包しましたので、申し訳ないですが郵送していただけると助かります」
「・・・・・・では、長瀞のご自宅まで送らせますので少々お待ちください」
「いえ・・・・・大丈夫です。一人で帰れます。・・・・・あ」

紗奈はスケッチブックを取り出して一枚の絵をびりびり・・・・と破いた。

「これ・・・・・お世話になったお礼というか・・・・・。こんなものいらないかもしれないんですけど、藤原さんを描いたんです。いつも背筋が伸びていて、佇まいが綺麗だったので・・・・・」

藤原が姿勢よく立ち前を見据えている、普段通りの姿だった。
紗奈から自分の絵をもらって藤原は初めて表情を崩した。
自分を見つめて微笑む師匠の優しい眼差しと似ていた。

「ありがとうございます」
「お世話になりました・・・・・」

二人でお互い頭を深々と下げる。

「・・・・・・祐哉様にお会いになられなくてよろしいのですか?」

藤原がこうやってプライベートなことに口を出すことは今まで無かった。
紗奈は寂しげに笑って答えた。

「はい・・・・・・。会ってしまったら、ここから離れられなくなりそうなので・・・・・」

紗奈は思わず本音を口にした。
きっと藤原なら黙っていてくれるという信頼感がそこにあった。

藤原は何も言わずに玄関のドアを開け、前に止まっていた運転手に行き先を告げた。

「せめて駅まで送らせてください。では、また」

’また’と言ってくれた。またきっと来てくれという気持ちが嬉しかった。

紗奈はもう一度頭を下げると車に乗り込んだ。

大きな門をくぐり屋敷を出る。

祐哉の声が聞こえた気がして思わず振り向いた。
門がゆっくり閉じようとしていた。

「・・・・・・・・っ」

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