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月夜の迷子たち
第8章 物語の続き
頬に伝う涙を誰かが拭いてくれる感触で目が覚めた。

瞼が異様に重い。それでもなんとか目を開く。

祐哉の顔が間近に見えた。

「・・・・・・祐哉さん・・・・・・・・」

祐哉は心底ホッとした顔で紗奈を見つめている。

(そうか・・・・・・私、あのまま気を失って・・・・・・)

まわりを見渡す。病院のベッドだった。左手に点滴がつながっている。
右手を祐哉が握っていた。

祐哉が助けてくれたのだ。
絵が描けなくてパニック状態になったところに祐哉が現れたことは、ぼんやりとしか思い出せなかった。

「泣きながら笑ってたけど、どんな夢見てたの?」

祐哉が優しい眼差しで尋ねた。

「先生が・・・・・・。絵の・・・・・・師匠の」

祐哉が微笑んだ。

「なんだ。俺の夢じゃなかったか」

紗奈はクス・・・・・と笑った。

「祐哉さんも出てきた・・・・・・。あなたがランスロットで・・・・私がシャロットの姫」
「ハッピーエンドじゃないじゃないか。それは困る」
「先生が描き変えてくれたの。最後に・・・・・二人は結ばれるって。物語は君の望むように描いていいんだって・・・・・言ってくれた・・・・・・」
「・・・・・・良い先生だね」

紗奈の手を握る祐哉の手に力が込められ、微笑み合う。

祐哉が側にいてくれることに安堵しながらも、紗奈は何か大事なことを忘れている気がしていた。

(あ・・・・・・!お金・・・・・・・!)

今日は何日だ?週明けにもう一度母に送金することになっているのだ。
ショックのあまり忘れていた。
今頃レイアの元に行っていたらどうしようということが真っ先に頭に浮かんだ。

「大変・・・・・・!私、やらなきゃいけないことが・・・・・」

勢い良く起き上がってみたものの、途端に眩暈と吐き気に襲われる。

祐哉が紗奈の身体を支えてベッドに横たわらせる。

「だめだ。急に起き上がったりしたら。大丈夫、君の母親のことなら気にしないでいい」
「でも・・・・・・」
「レイアさんのことも大丈夫。あとは任せて。今は君の身体の方が大事だ。レイアさんも心配していたよ。早く良くなって欲しいって」
「・・・・・・・・」

レイアの優しさが紗奈の涙腺を崩壊させた。

「どうしよう・・・・・・私のせいで・・・・・・レイアちゃんに・・・・・・」

嗚咽でその後は言葉にならなかった。声を上げて泣いた。
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