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月夜の迷子たち
第8章 物語の続き
「それが、いつだったかしらね?二ヶ月前くらいかな?突然電話してきてね。海運は兄さんじゃなくて俺が引き継ぐ。だから結婚は好きな人とさせて欲しい!って言うからびっくりしちゃった!」

そんなに前から紗奈との結婚を考えていたのかと、紗奈も驚いた。

「うちは海運だけじゃなくて色々手広くやっててね。今は海運が主力ではないけど、それでも始まりは海運業から始まったから、なんていうか・・・・・主人たちは一番要の部分だと今でも思ってるわけよ。もちろん征哉がやっても祐哉がやっても、それ以外の人がやってもいいんだけど、そこをあえて自分がやるって言って。そんな積極的な子じゃなかったのに、いきなりそんなこと言うから、あーこれは何かあったなって思って。紗奈ちゃんと一緒になりたかったんだって知ってね。嬉しかった。あなたのこと周りに文句言わせないって張り切って仕事してるって。父親と全く同じ!あの子の父親もね、私と結婚したいから同じこと言ったのよ!」

澄子はさらりと惚気話をした。
今度は紗奈がふふ・・・・・と微笑んだ。

紗奈の手を澄子はそっと握る。

「えらいわねえ・・・・・・。この手であなた生きてきたのよね」

しみじみと紗奈の手を見て言った。

「私もね。それなりに苦労して育ったのよ。父親がギャンブルと酒と女と・・・・・って破天荒な人でねえ。母は病弱、幼い弟妹抱えてっていう、お決まりの貧乏生活でねえ。そんな人間だったのに、ひょんなことから中園の家で働くことになって。最初は主人も私のこと毛嫌いして、お姑さんなんか私のことゴミ扱いよ!あなたは燃えるゴミで出すの?それとも粗大ゴミで出したらいいの?って」

あはは!と澄子は笑った。

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