この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
月夜の迷子たち
第8章 物語の続き
「坂東妻三郎って知ってる?銀幕の大スターなんだけど、すっごいイケメン。お義母さん、板妻さんのファンだったの。写真をこっそり持っててね。自分の旦那は若い女とバンバン遊んでるのに、隠れて写真見てるだけなんて健気でいじらしくなっちゃって。それからはお義母さんの部屋で板妻さんのビデオ一緒に見てきゃーきゃー言うのが日課になって。そのうち私が好きだった宝塚見るようになって・・・・・。お義母さん一人のトップスターに恋してね。一緒にファンレター書いたり、自分の目で観たいって言ってベッドから出らなかったのに車椅子乗って劇場に行ったのよ。恋の力ってすごいわね。帰りはニコニコで目をキラキラさせて可愛かったぁ・・・・・。私もお義母さんとおしゃべりしたり出かけるのが楽しくて楽しくて。亡くなる前にね、澄子のおかげで人生楽しかったって、澄子を自分のお腹から生みたかった・・・・・って言われて、泣いちゃった。粗大ゴミで出そうとしていた私をよ?」
澄子は少し恥ずかしそうに笑った。
紗奈の胸もじーんと熱くなる。
「血が繋がってなくてもね、本当の親子以上になれるって思ったわ。長くなってごめんなさい。結局、何が言いたいかっていうと、紗奈ちゃん、子供は親を選んでいいのよ。小さい頃は確かに選べなくて辛い思いをすることもあるけど、もうあなたは自立した大人なんだから。捨ててもいいし、他の誰かの中に親や家族の愛情を求めてもいいの。祐哉だけじゃないわ。征哉もいるし、お友達も、俊も、私もいる。もう皆、あなたの家族なのよ」
(親を捨てていい・・・・・・・・?)
紗奈は雷に打たれたような衝撃を受けていた。
母からはどんなに逃げようとも離れられないと思っていた。
どんなに母を嫌っても、距離を取っても、自分には母の血が流れている・・・・・。
断ち切ることの出来ないと思っていたしがらみを、澄子は断ち切っていいのだと言った。
親を捨てていいという言葉が頭の中を駆け巡って、紗奈の心の一点を眩しく照らした。
解き放てと言われている気がした。
「わ・・・・・・私・・・・・・・」
紗奈の心にぎゅうぎゅうに閉じ込められていた感情が、わずかに顔を出したかと思うと一気に溢れ出てきた。
澄子は少し恥ずかしそうに笑った。
紗奈の胸もじーんと熱くなる。
「血が繋がってなくてもね、本当の親子以上になれるって思ったわ。長くなってごめんなさい。結局、何が言いたいかっていうと、紗奈ちゃん、子供は親を選んでいいのよ。小さい頃は確かに選べなくて辛い思いをすることもあるけど、もうあなたは自立した大人なんだから。捨ててもいいし、他の誰かの中に親や家族の愛情を求めてもいいの。祐哉だけじゃないわ。征哉もいるし、お友達も、俊も、私もいる。もう皆、あなたの家族なのよ」
(親を捨てていい・・・・・・・・?)
紗奈は雷に打たれたような衝撃を受けていた。
母からはどんなに逃げようとも離れられないと思っていた。
どんなに母を嫌っても、距離を取っても、自分には母の血が流れている・・・・・。
断ち切ることの出来ないと思っていたしがらみを、澄子は断ち切っていいのだと言った。
親を捨てていいという言葉が頭の中を駆け巡って、紗奈の心の一点を眩しく照らした。
解き放てと言われている気がした。
「わ・・・・・・私・・・・・・・」
紗奈の心にぎゅうぎゅうに閉じ込められていた感情が、わずかに顔を出したかと思うと一気に溢れ出てきた。