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月夜の迷子たち
第8章 物語の続き
征哉が誓いのキスをするように促す。

祐哉が紗奈の肩にそっと手を添えて屈んだ。
頬にそっと祐哉の唇が触れた。

皆が口々におめでとうと言って拍手が起こった。

紗奈はぐるりと参列者を見渡した。
皆が笑顔で祝福してくれている。

幸せで胸が熱くなった。
自然と涙が流れ、レイアが慌ててハンカチで頬の涙を拭いてくれた。

まさか自分がこうして優しさと愛情に溢れた結婚式を挙げることになるなんて・・・・・。

ありきたりだが、本当に夢のようだと紗奈は思った。

感謝の気持ちを込めて、皆の祝福に笑顔で応えたのだった。




食事が始まり、祐哉はみんなに酒をつがれてひっきりなしに飲まされている。

紗奈はコテージの前のベンチに座っている祐哉の父のもとへ向かった。

両家での食事会に祐哉の父は急遽仕事で参加できなくなったので、顔を合わせるのは今回が初めてだった。

紗奈が近づいてくることに気がついて、祐哉の父、秀一は立ち上がった。
祐哉をそのまま歳を取らせたような、雰囲気も佇まいもそっくりだったが、寡黙なイメージがあるので何を話していいのか緊張する。

「挨拶が結婚式当日になってしまって申し訳ない」

秀一は開口一番にそう謝罪すると軽く頭を下げた。

紗奈は慌てて、こちらこそ都合がつけられずに申し訳ありませんでしたと頭を下げた。

「君の絵を見せてもらった。どれも素晴らしい。祐哉の肖像画もとても良かった」
「ありがとうございます。恐縮です」

緊張している紗奈を見て、少し気まずそうに小さく咳払いをした。
紗奈はずっと言っておかなくてはと思っていたことを口にした。

「あの・・・・・・私、本当に絵を描く以外のことが出来ません。語学はもちろん、一般的な学もありません。人付き合いも上手に出来る自信がありません。さぞかしご心配のことと思います。でも・・・・・・」
「そんなことは気にしなくていい」

精一杯頑張ります、と続けようと思ったところで遮られた。

「・・・・・今日の祐哉の顔を見ていたら、自分の若かった頃のことを思い出したよ」

秀一は征哉に飲まされている祐哉を見つめながら言った。

「’どんなことがあっても、この人のことは自分が守る’という祐哉の強い意志が見てとれた。祐哉がそう思う人なのだから、間違いない」
「・・・・・・・・」

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