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月夜の迷子たち
第2章 再会
確かにそれはつい最近思ったことであった。しかし、あれはイレギュラーな出来事であって、普段は何も問題ないのだ。
もし何かあって・・・・死ぬようなことがあれば、それはそれまでのこと。


耕太は姪の考えていることがわかっているようで、おおげさにため息をついた。

「お前がいなくなったら、俺はどうやって食っていけばいいんだよ!」

耕太が心配しているのは結局それなのだ。紗奈は苦笑した。

紗奈が描く模写は、他の画家が描くものとは一線を画していた。
絵のタッチ、色、すべてにおいて本物にそっくりなのである。プロの鑑定士も迷わせるクォリティで、値段も通常よりずっと高いし、根強いファンが多かった。
それを売って稼いでいる耕太にとって、紗奈がいなくなるのは死活問題なのだ。
とはいえ、自分以外にも多くの画家を抱えるようになり、商売として成り立っているのだから生きていけない、は大げさなのだが。

「わかりました。直します。すぐに」

修理してもどうせすぐにねずみにかじられてしまうし、絵に集中している時は電話の音など耳に入らないのだから、と紗奈は心の中で呟いた。

やる気のない返事に再びため息をついて、もういいい、俺が修理の電話しとくと面倒くさそうに言うと車のエンジンをかけた。

「香織も心配してっぞ。女の子一人でこんな山奥で暮らしてって。いつだって一緒に暮らせるんだからな」

紗奈はありがと、と言って手を振った。
耕太はひらひらと手を振って去っていった。

車が見えなくなるまで、紗奈はその場に立っていた。
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