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月夜の迷子たち
第2章 再会
ここで暮らし始めて何年になるだろう。
もうこの世にはいない、耕太の父、つまりは紗奈の祖父が所有していたこの小さいコテージに移り住んでから。
紗奈は今年二十二歳になるから、四年ほどになる。

紗奈の父は美術教師だった。紗奈が三歳の時に教え子と駆け落ちして父と母は離婚した。
母は父に似ていた紗奈に怒りや悲しみをぶつけるようになった。
再婚して弟と妹が立て続けに生まれると、それは一層ひどくなった。

身体的な虐待等はなかったし、食事は人並みに与えられていたが愛情は与えられなかった。

母は周囲にそれを隠そうともせず、むしろ誰かに引き取ってもらいたいと常に愚痴を言っていた。

次第に紗奈の衣服だけ洗わず、学校の行事も来ることもなく、旅行も外食も紗奈だけ連れていかなくなった。紗奈という人間が存在していないように母も再婚相手も妹弟たちも振舞った。

紗奈の心の支えは絵だった。図書館で絵画集を借りて眺め、ひたすら部屋で絵を描いた。
画用紙なんか買ってもらえなかったから、学校でもらったプリントの裏や広告の裏に描いた。
えんぴつは耕太がいつもこっそり買ってくれた。

見かねた父の弟である耕太が、紗奈を養子にすると言い出したのは紗奈が6年生になる時だった。
正確に言うと耕太の当時の彼女で、現在は妻となった香織が提案してくれたのだった。

香織のおかげで紗奈は心を開いたといっていい。
香織は耕太の三つ年下で、幼稚園の教諭をしていた。
明るく、溌剌とした香織の性格が紗奈の拒絶の気持ちを溶かしていったのだった。

耕太は少し頼りなくて、大学卒業後に入った会社は一年で辞め、その後も転職を繰り返していたが、紗奈の絵の才能に目をつけると複製画を売って稼ぐことを生業にすると宣言した。それは想像以上に香織を怒らせ、離婚話にまで発展した。
姪を利用して金儲けするとは何事だ、自分の能力を磨け、と。

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