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月夜の迷子たち
第9章 【第二部】マスカレードの夜に
鴻池邸には既に招待客が集まっていた。
現代のドレス姿、スーツだったり、中世ヨーロッパのドレスや騎士のような格好、多種多様な服装をした人々で溢れていた。そして若者だけが仮面をつけている。異様な雰囲気であった。
「しっかし・・・・鴻池の威厳を示すためにってだけで、一体どんだけ金使ってんだ?」
近世ヨーロッパの貴族の屋敷をモチーフに家具や絵画、装飾品が揃えられていた。
「鴻池夫人はこれまで何度もこの催しはもうやめるとおっしゃっていますが、周りが続けて欲しいと要望しているそうです。特に今年は20周年ですから皆さんの寄付もかなり集まったようですね」
「そりゃそうさ。こんな悪趣味で大掛かりなことするやつが他にいるかよ。鴻池が手を引いたら困るからな。多少の寄付ぐらいするさ。どうせうちのおっさんも張り切って寄付してんだろ」
俊は知っていたが黙っていた。征哉の言う通り、今年は征哉の父もいつも以上に寄付している。
この家から招待を受けた人物は正当な経歴を持つ人間だけだから、上流階級の親たちは娘や息子が身分不相応な人間と結婚されることを恐れて、率先して鴻池邸の催しものに参加させる。金持ちたちの見合いの場所でもあるのだった。
征哉はすぐに顔見知りの財界人に声をかけられ人々の輪の中に消えていった。
俊はオーケストラのメンバーと簡単な挨拶を済ませると、三日前に手渡された楽譜を開いた。まともに練習などしていないが、どうせ演奏など真剣に聴く人間はいないのだ。数多い兵隊の一人になった気分で気楽にやるつもりだった。
(美しく青きドナウ・・・・・華麗なる大円舞曲・・・・・バッハの管弦楽組曲第一番・・・・)
簡単な打ち合わせが行われると後は自分の席に座って演奏が始まるのを待つだけだった。
鴻池家の当主である克彦が挨拶をする。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。この舞踏会も今年で20回目となり・・・・・」
長い当主の挨拶をBGMに俊は会場を見渡した。
征哉がさっそく露出度の高いドレスを着た若い女性と談笑しているのが目に入る。
俊とは対照的に満面の笑みだった。かすかに沸き起こるイライラする気持ちを抑えるために俊は視線を扉に移した。
現代のドレス姿、スーツだったり、中世ヨーロッパのドレスや騎士のような格好、多種多様な服装をした人々で溢れていた。そして若者だけが仮面をつけている。異様な雰囲気であった。
「しっかし・・・・鴻池の威厳を示すためにってだけで、一体どんだけ金使ってんだ?」
近世ヨーロッパの貴族の屋敷をモチーフに家具や絵画、装飾品が揃えられていた。
「鴻池夫人はこれまで何度もこの催しはもうやめるとおっしゃっていますが、周りが続けて欲しいと要望しているそうです。特に今年は20周年ですから皆さんの寄付もかなり集まったようですね」
「そりゃそうさ。こんな悪趣味で大掛かりなことするやつが他にいるかよ。鴻池が手を引いたら困るからな。多少の寄付ぐらいするさ。どうせうちのおっさんも張り切って寄付してんだろ」
俊は知っていたが黙っていた。征哉の言う通り、今年は征哉の父もいつも以上に寄付している。
この家から招待を受けた人物は正当な経歴を持つ人間だけだから、上流階級の親たちは娘や息子が身分不相応な人間と結婚されることを恐れて、率先して鴻池邸の催しものに参加させる。金持ちたちの見合いの場所でもあるのだった。
征哉はすぐに顔見知りの財界人に声をかけられ人々の輪の中に消えていった。
俊はオーケストラのメンバーと簡単な挨拶を済ませると、三日前に手渡された楽譜を開いた。まともに練習などしていないが、どうせ演奏など真剣に聴く人間はいないのだ。数多い兵隊の一人になった気分で気楽にやるつもりだった。
(美しく青きドナウ・・・・・華麗なる大円舞曲・・・・・バッハの管弦楽組曲第一番・・・・)
簡単な打ち合わせが行われると後は自分の席に座って演奏が始まるのを待つだけだった。
鴻池家の当主である克彦が挨拶をする。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。この舞踏会も今年で20回目となり・・・・・」
長い当主の挨拶をBGMに俊は会場を見渡した。
征哉がさっそく露出度の高いドレスを着た若い女性と談笑しているのが目に入る。
俊とは対照的に満面の笑みだった。かすかに沸き起こるイライラする気持ちを抑えるために俊は視線を扉に移した。