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月夜の迷子たち
第9章 【第二部】マスカレードの夜に
「お前も一目みたら気が変わるさ。さ、演奏は僕が変わろう」
「何言ってるんです。練習もしてないのに」
「僕を誰だと思ってる。一度聴けば弾けるさ。わからなかったらアドリブだ。次は・・・・ハチャトゥリアンの仮面舞踏会、ワルツか。ふん、この中にニーナの悲劇について知ってる人間がどれだけいるかな」

征哉はレールモントフの戯曲「仮面舞踏会」のストーリーも知らずに曲の華やかさや怪しさに酔いしれて踊るであろう人々を嘲った。

「結構です。征哉さんは征哉さんの役割を・・・・・」

その時黒いスーツの男性が征哉に近づいてきた。

「征哉さん、ご無沙汰してます」

マスクはしてなかった。美しい切れ長の目の奥をわずかに光らせ、男は征哉に握手を求めた。ストレートの髪はきれいに手入れされ、会場の照明を受けて輝いている。

大河清人。大河建設の五男で、その美しさ故あらゆる恋の噂が絶えなかったが、
一年ほど前、鴻池文子の姪である女性と結婚したのだった。

「・・・・・よお、清人。聞いたぜ。鴻池にまんまと潜入したって?」

征哉は辛らつな笑みを浮かべて手を握った。   

「潜入だなんて。相変わらず言葉を選びませんねえ。単に結婚しただけです」

清人は俊にも握手を求めた。普段秘書の立場でこういう場に参加する俊にとって握手を求められることは珍しい。俊はためらいがちに握手をした。

征哉は清人が経営するクラブに度々足を運んでいたかつての常連客だった。若い頃はそういう夜遊びを散々していたが、次第に飽きて今ではすっかり夜の店に行くことはない。
店を改装する時にアドバイスを求められ、あれこれ助言してから音沙汰なしだった。

「征哉さんのところは有能な秘書がいてうらやましいですね。ヴァイオリンまでお上手だなんて」
「そうさ。本来ならこんなオケの隅っこで弾いてるようなやつじゃない。今ここでソロで弾いたっていいくらいだ」
「へえ、それはぜひ聴いてみたいですね」

征哉は満更でもない様子で微笑んで俊の肩を抱いた。
清人は征哉が大切にしている人を褒められると喜ぶことを良く知っているようだった。

「俊、カプリース弾いてここにいる連中の度肝を抜いてやれ」
「勘弁してください」

清人がウェイターからカクテルを二つ受け取り、一つを征哉に渡した。
軽くグラスを合わせて乾杯する。

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