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月夜の迷子たち
第9章 【第二部】マスカレードの夜に
そうしてフロアにエスコートし、向かい合う。
そこで初めて彼女の顔を間近に見た。

心臓が止まりそうなどという表現を俊はこれまで陳腐なものだと思ってきたが、まさに今自分がそれを体現していた。


その瞳はグレーか薄いブルーか。

光の加減で変化するようにも見えた。
何か面白いものを見つけた乙女のような輝きに満ちているようにも見えるし、仮面のせいかハチャトゥリアンの旋律のせいか、小悪魔が何か悪戯を企んでいるようにも見え、見る者の心を惑わせた。

何も言えないでいる俊を前に女性は愛らしく微笑みかけた。

天上の者かのような柔らかな微笑みに、今すぐマスクを取り払って彼女の全てを愛でたいという衝動にかられた。

シンバルの音にハッとして、俊はなんとか冷静さを取り戻し、女性の手をとった。
音を良く聴いてステップを踏み始めた。

『仮面舞踏会』・・・・・。

三拍子の典型的なワルツではあるが、華々しく重厚な旋律は貴族社会の栄華を思わせ、正体を明かさずに踊り続ける仮面舞踏会の妖しさが上手く表現された名曲である。

人々は優雅な動きでフロアを周り、今日一番の熱気を感じるのはやはり定番のこの曲のせいだろう。

目の前の女性が本当に貴族の娘で、自分は彼女の正体を暴きたいと思いつつ見蕩れてしまう平民の男のような気がしてくる。まるでタイムスリップしたような感覚だった。

必要以上に彼女の体を引き寄せてしまいそうになるのを堪えて俊はなんとかダンスと曲に集中しようと努めた。

俊の身長は185cmあるが、踊っていても違和感がない。ちょうど良い高さに腰があり、リードしやすかった。

が、征哉の言うように何度も足を踏まれる。本来、ワルツの経験がなければせめて相手の足を踏まないようにとぎこちなくなるものだが、彼女の場合はとても良い具合に力が抜けていて、一見ホールドの姿勢も良く見せる。
足元の動きに全く無関心といった感じで、まるで最初から踏むつもりで狙っているのではないかと思わせるほどだった。

俊は次第にイライラして言った。

「踊り、下手ですね」

すると女性はぷーっと噴出した。

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