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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
「’とうた’って何よ」
「不用なものは排除するってことだ。もっと簡単に言えば、いらなくなったら捨てるってことだ」

レイアは言われて初めてそこで慌てた。

「えーっ!それは困る・・・・・!このお家に出入りできなくなっちゃうってことでしょう?それは嫌だなぁ」

レイアはすっかり中園の家のことが気に入っていた。おいしいものが食べられるというのはもちろんだったが、何より人が大勢いて賑やかなところが好きだった。

「であれば、行動を改めた方がいいと言っているんだ」
「例えば?」
「例えば・・・・・花をもらうなら、剪定した草木の片付けをしたり、雑草取りを手伝うとか。菓子をもらうなら茶会で使った食器を洗うのを手伝うとか・・・・・ちょっとしたことでもやれば皆喜ぶし、君だってただでもらうよりは気兼ねしないでいいだろ」

レイアはなるほど・・・・・とつぶやいて頷いた。

「それもそうね。なんで今まで気づかなかったんだろ。この家の人みんな優しいからなぁ。ついつい甘えちゃって・・・・・って、あ!この家に甘えるのはやめろってそういう意味かぁ!」

レイアは目を輝かせて俊をみた。やれやれといった表情を浮かべてため息をついている。

「さっすが有能秘書!でも、それならもっと早く言ってよね」
「おい・・・・・俺が今まで何回言ったと・・・・・」
「じゃ!さっそくお庭掃除のお手伝い行ってきまーす!」

レイアは大きく手を振ってその場を去って行った。


俊は時間や約束事に厳しいし、言ったことはちゃんと行動する。時間にルーズで約束事も時々忘れるレイアとは正反対だった。

先生みたいでうるさい時もあるが、基本は良い奴だ。

この家のことをとても大切に思って、愛情を持って仕事をこなしていることがわかる。
単純に偉いなと思う。そしてそこまで出来るものがあって羨ましいとも思う。

自分の背中を俊が見つめていることも気づかずに、レイアは長い髪をなびかせて少女のように走り去っていった。
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