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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
俊は少し重い足取りで祐哉の部屋に向かった。
「俺だ」
ノックをするとすぐに返事があった。
「どうぞ」
今日は大人しくベッドに横たわっていた。大きな本を開いて眺めている。おそらく画集だろう。
窓は開いていて、柔らかな日差しが部屋に入り込んでいた。ひんやりとした空気が流れてくる。
「寒くないか?閉めるぞ」
「いや、開けておいて」
覗き込むとやはり絵画集だった。
ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』
「・・・・・連絡取れたぞ」
祐哉がハッとして俊を見上げた。
「彼女と?」
見開かれた目の奥に不安が見て取れる。こんな顔をする祐哉は初めてだ。俊は内心ため息をついた。
「・・・・彼女の叔父がマネージメントをしているから、まずはその叔父の松代耕太という男に連絡をした。住み込みで絵を描くなんて特殊な依頼だからな。面食らってたけど、報酬を聞いた反応からするとおそらくオーケーだろう。まずは一度この家に彼女を連れてきてもらって面談をすることになった」
祐哉は小さく頷いて画集を閉じた。
「面談の日は?」
「これから調整する」
「そう・・・・・なるべく早く頼む」
俊は無言で画集を祐哉から取り上げると本棚に仕舞った。
「どういうつもりだって顔してるな。そんなに心配か?」
祐哉が俊の横顔を眺めて苦笑して尋ねた。
「いや・・・・・どうして急に肖像画を描くことにしたのかと思って。あれだけ嫌がってたのに」
俊はベッドの脇の椅子に座ると、簡単な履歴書と今回のオファーの仮の契約書を手渡した。
「描いてもらいたい人が見つかったからさ。お前も彼女の絵を見たら納得するよ」
履歴書を見て、松代紗奈・・・・・と祐哉が小さく呟いた。
「実はもう松代耕太とは会った。今日の午前中に。彼女が書いた絵を持ってきてもらった」
そう言っていくつかの絵画のサンプルを祐哉に渡した。
「なんだよ。なぜ黙ってた?俺も呼ぶべきだろう。依頼主なんだから」
祐哉が眉をひそめて不満を言った。
「どんな人物かもはっきりしないのに、いきなりお前に会わせられるか。まだ決定じゃないのにお前の名前を出して、あることないこと口外されても困るからな。俺が依頼したことになってる」
祐哉はため息をついた。珍しく不満気だった。
「俺だ」
ノックをするとすぐに返事があった。
「どうぞ」
今日は大人しくベッドに横たわっていた。大きな本を開いて眺めている。おそらく画集だろう。
窓は開いていて、柔らかな日差しが部屋に入り込んでいた。ひんやりとした空気が流れてくる。
「寒くないか?閉めるぞ」
「いや、開けておいて」
覗き込むとやはり絵画集だった。
ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』
「・・・・・連絡取れたぞ」
祐哉がハッとして俊を見上げた。
「彼女と?」
見開かれた目の奥に不安が見て取れる。こんな顔をする祐哉は初めてだ。俊は内心ため息をついた。
「・・・・彼女の叔父がマネージメントをしているから、まずはその叔父の松代耕太という男に連絡をした。住み込みで絵を描くなんて特殊な依頼だからな。面食らってたけど、報酬を聞いた反応からするとおそらくオーケーだろう。まずは一度この家に彼女を連れてきてもらって面談をすることになった」
祐哉は小さく頷いて画集を閉じた。
「面談の日は?」
「これから調整する」
「そう・・・・・なるべく早く頼む」
俊は無言で画集を祐哉から取り上げると本棚に仕舞った。
「どういうつもりだって顔してるな。そんなに心配か?」
祐哉が俊の横顔を眺めて苦笑して尋ねた。
「いや・・・・・どうして急に肖像画を描くことにしたのかと思って。あれだけ嫌がってたのに」
俊はベッドの脇の椅子に座ると、簡単な履歴書と今回のオファーの仮の契約書を手渡した。
「描いてもらいたい人が見つかったからさ。お前も彼女の絵を見たら納得するよ」
履歴書を見て、松代紗奈・・・・・と祐哉が小さく呟いた。
「実はもう松代耕太とは会った。今日の午前中に。彼女が書いた絵を持ってきてもらった」
そう言っていくつかの絵画のサンプルを祐哉に渡した。
「なんだよ。なぜ黙ってた?俺も呼ぶべきだろう。依頼主なんだから」
祐哉が眉をひそめて不満を言った。
「どんな人物かもはっきりしないのに、いきなりお前に会わせられるか。まだ決定じゃないのにお前の名前を出して、あることないこと口外されても困るからな。俺が依頼したことになってる」
祐哉はため息をついた。珍しく不満気だった。