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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
「・・・・外の世界を見たら死ぬとわかっていて恋をするなんて愚かとしか言いようがない」
「そうかな。ランスロットを追いかける船の上で、彼女は幸せだったんじゃないか。一生塔の中で一人で生きていくより・・・・・」
「幸せ?ランスロットは彼女の気持ちに応えないじゃないか。外へ出ても出なくでも、どちらにせよ悲劇だよ」
まだ何か言いたそうにしている祐哉を横目に、俊はちゃんと休めよと言って部屋を出ていった。
叶わぬ恋に身を焦がすことが美しいなんて物語での中だけだ。
現実には悲劇でしかない。
俊の頭の中にレイアの姿が思い浮かんだ。
仮面舞踏会から間もなく、レイアは中園の家に出入りするようになった。
長いゆるくウェーブのかかった茶色い髪を垂らし、細身のジーンズに薄手の白いニットを着たレイアがひょっこり現れた時、すぐにあの時の女性だと気がついた。
マスクをしてない素顔は想像以上に愛らしく瑞々しく美しかった。
姿だけではなく、その内面もまた天真爛漫で少女のような純粋さ、可愛らしさに溢れ、誰でも魅了されてしまう魅力があった。
すぐに使用人たちも中園の人間も彼女を好きになった。
彼女の姿を見るたびに、俊の心は苦しくなり、奥の方の隠し続けてきた感情が揺さぶられた。
彼女は誰からも愛され、彼女もまた誰をも愛している。そんな風に見えた。
彼女のその無垢な瞳を自分だけに向かせたい・・・・・。
一瞬浮かんだ感情を俊は力づくで打ち消した。
塔から出ない方が幸せだ。得るものは無いかもしれないが、傷つくこともないのだから。
「そうかな。ランスロットを追いかける船の上で、彼女は幸せだったんじゃないか。一生塔の中で一人で生きていくより・・・・・」
「幸せ?ランスロットは彼女の気持ちに応えないじゃないか。外へ出ても出なくでも、どちらにせよ悲劇だよ」
まだ何か言いたそうにしている祐哉を横目に、俊はちゃんと休めよと言って部屋を出ていった。
叶わぬ恋に身を焦がすことが美しいなんて物語での中だけだ。
現実には悲劇でしかない。
俊の頭の中にレイアの姿が思い浮かんだ。
仮面舞踏会から間もなく、レイアは中園の家に出入りするようになった。
長いゆるくウェーブのかかった茶色い髪を垂らし、細身のジーンズに薄手の白いニットを着たレイアがひょっこり現れた時、すぐにあの時の女性だと気がついた。
マスクをしてない素顔は想像以上に愛らしく瑞々しく美しかった。
姿だけではなく、その内面もまた天真爛漫で少女のような純粋さ、可愛らしさに溢れ、誰でも魅了されてしまう魅力があった。
すぐに使用人たちも中園の人間も彼女を好きになった。
彼女の姿を見るたびに、俊の心は苦しくなり、奥の方の隠し続けてきた感情が揺さぶられた。
彼女は誰からも愛され、彼女もまた誰をも愛している。そんな風に見えた。
彼女のその無垢な瞳を自分だけに向かせたい・・・・・。
一瞬浮かんだ感情を俊は力づくで打ち消した。
塔から出ない方が幸せだ。得るものは無いかもしれないが、傷つくこともないのだから。