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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
「えー?だってそんなのは私の意思じゃないし。生まれた時からこうだから、努力して手に入れたとかじゃないもん。自分が’これがやりたい!’って打ち込める’何か’を持ってる人がうらやましい。紗奈ちゃんは絵だし、祐哉くんと征哉くんは、大きな会社を守っていくっていう役目があるし、秘書は秘書の仕事があるし」
「おい・・・・・俺だけ雑じゃないか?」

俊が不満気に言ったがレイアは無視して続けた。

「みんなそれぞれ一生懸命でいいなって思う。私も何か見つけたいなぁ」
「でも君は入院中のお母さんの世話があるんだろ?そちらが疎かになっても困るんじゃない?」

征哉に言われてレイアは頷いた。

「そこが難しいところよね。今はまだ見つからない方がいいのかな」
「いやいや、そんなことはない。上手く両立させることだって可能さ。レイアちゃんは何が得意なの?」

征哉がレイアのカップにコーヒーを追加した。人生相談の装いになってきた。

「得意ねえ・・・・・・。お料理も普通にしか出来ないし、絵心もないし、足も遅いし・・・・・。スウェーデン語が少し出来るくらいかなぁ」
「彼氏は?結婚願望ないの?」

俊は一瞬動きを止めた。征哉が俊の方に目配せをしたが気づかないふりをする。

「彼氏いないし、結婚もまだいいかなぁ」
「ふーん。どんな男が好みなの?今まで付き合った人ってどんな感じ?」

征哉は俊のために探りを入れているのか、単純に興味があって聞いてるのか。
俊はコーヒーを飲んで興味のないふりをする。

「私、全然恋愛経験ないのよねえ。二十歳の時に一人だけ付き合ったことあって。その人は四十歳くらいの人だったけど・・・・。どんな人だったかって言われると困るくらい特徴のない人だったな。通ってた歯医者の先生なんだけど」
「四十の時に、二十歳の君と付き合えるなんて!羨ましいもんだ。何が良かったの?金?身体の相性?」

征哉があまりに明け透けに聞くので俊は驚いて思わず声をあげた。

「征哉さん・・・・・・!」

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