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月夜の迷子たち
第2章 再会
電話の修理が終わってすぐ、耕太から電話がかかってきた。
12月も半ばを過ぎ、世間は年末を控えてあわただしくなってきていたが、山にこもっている紗奈にとってはいつもと変わりのない日常だった。
「おい、紗奈!お、落ち着けよ。いいか、落ち着けよ。・・・・ものすごいのがきた!」
耕太は明らかに狼狽している様子で言った。
落ち着くのは耕太くんの方では・・・とは言わず、紗奈は次の言葉を待った。
「次の依頼の話?」
「そう!すごいぞ!金額が・・・・言えないんだけど!」
耕太はいつもいくらの値段でやり取りしているのかを教えてくれない。
金に目がくらむと紗奈が良い絵がかけなくなるという無理やりな理由で。
報酬は十分もらっていたし、物欲もなかったから、紗奈に不満はなかった。
「依頼主の肖像画!100号!」
「100号・・・・」
100号の肖像画というのは、いつもと比べると大きい。紗奈はどのくらいかかるかなと頭でスケジュールを組んだ。
「それでさ、今までとちょっと違うのが、住み込みで描いて欲しいんだって」
「・・・・・ええ!?住み込み!?」
突拍子のない話に、紗奈は眉をひそめた。
耕太は東京の地名を挙げて、依頼主の家に住み込みながら絵を描くのだと言った。
「お前が絵を描いていく工程を見たいらしい。大丈夫、一人暮らしの男とかじゃなくて、大家族で暮らしてるらしいし、由緒正しいお宅だから変なことにはならんだろ」
「そんな・・・・!」
そんなことを提案してくる人は初めてだった。
耕太の興奮した口ぶりからおそらく相当な額を提示されたと思われた。
困惑する紗奈をよそに、耕太は先に進もうとする。
「他の仕事も並行してやっていいって言ってたから、今の時点で残ってるものは引き続きやってもらって、新規の依頼はストップする。
住み込みだからしばらくそこには帰れないつもりで準備しといて。もちろん滞在にかかる費用は相手持ちだから気にすんな」
待って!と言おうとして唇を噛んだ。
恥ずかしそうに妊娠を報告していた香織の姿が目に浮かんだ。
12月も半ばを過ぎ、世間は年末を控えてあわただしくなってきていたが、山にこもっている紗奈にとってはいつもと変わりのない日常だった。
「おい、紗奈!お、落ち着けよ。いいか、落ち着けよ。・・・・ものすごいのがきた!」
耕太は明らかに狼狽している様子で言った。
落ち着くのは耕太くんの方では・・・とは言わず、紗奈は次の言葉を待った。
「次の依頼の話?」
「そう!すごいぞ!金額が・・・・言えないんだけど!」
耕太はいつもいくらの値段でやり取りしているのかを教えてくれない。
金に目がくらむと紗奈が良い絵がかけなくなるという無理やりな理由で。
報酬は十分もらっていたし、物欲もなかったから、紗奈に不満はなかった。
「依頼主の肖像画!100号!」
「100号・・・・」
100号の肖像画というのは、いつもと比べると大きい。紗奈はどのくらいかかるかなと頭でスケジュールを組んだ。
「それでさ、今までとちょっと違うのが、住み込みで描いて欲しいんだって」
「・・・・・ええ!?住み込み!?」
突拍子のない話に、紗奈は眉をひそめた。
耕太は東京の地名を挙げて、依頼主の家に住み込みながら絵を描くのだと言った。
「お前が絵を描いていく工程を見たいらしい。大丈夫、一人暮らしの男とかじゃなくて、大家族で暮らしてるらしいし、由緒正しいお宅だから変なことにはならんだろ」
「そんな・・・・!」
そんなことを提案してくる人は初めてだった。
耕太の興奮した口ぶりからおそらく相当な額を提示されたと思われた。
困惑する紗奈をよそに、耕太は先に進もうとする。
「他の仕事も並行してやっていいって言ってたから、今の時点で残ってるものは引き続きやってもらって、新規の依頼はストップする。
住み込みだからしばらくそこには帰れないつもりで準備しといて。もちろん滞在にかかる費用は相手持ちだから気にすんな」
待って!と言おうとして唇を噛んだ。
恥ずかしそうに妊娠を報告していた香織の姿が目に浮かんだ。