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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
そうこうしているうちにゲームの時間になり、子ども達が集まってジェスチャーゲームが始まった。
最初はレイアがクジを引いて、イルカや象の真似をして子どもたちが答えていたが、次第に俺やりたい!と次々に子ども達がクジを引き始め、ゲームは盛り上がっていった。

先ほどの少女も目をきらきらさせて一生懸命声を上げて答えていた。

ふとかすかにヴァイオリンの音が聴こえ、庭へと続く大きなガラス扉の前に視線を移すと、俊と少年が椅子に座ってヴァイオリンを弾いていた。

どうやら俊が少年にヴァイオリンを教えているようだった。

中学生くらいの少年は一生懸命俊の言葉に耳を傾けていた。

俊はスーツの上着を脱いで、シャツを腕まくりしていた。いつもと違って表情が柔らかい。
笑顔も見られ、レイアは驚いていた。

(あんな優しそうな顔もするんだ・・・・・)

最初に出会った、あの舞踏会でも俊はヴァイオリンを弾いていた。
あの時は険しい顔をして弾いていたが、今少年に向かって弾いて見せる俊の眼差しは優しく、少年とのやりとりを心から楽しんでいるようだった。

レイアが俊と出会ってから初めて見た表情だった。

少年が上手く弾けたようで、俊が嬉しそうに頭をわしわしと撫でた。

トッ・・・・・・

レイアは一瞬心が跳ねた気がして動きを止めた。

(なんだろ・・・・今のは・・・・・・)

8時を知らせる時計の音が鳴り響いた。

レイアはハッとして、急いで出口へと向かった。
帰り際に子ども達に手土産のクッキーを渡すのだ。

皆、ご馳走様でした、ありがとうと笑顔でクッキーを受け取る。

一人で来た小学生以下の子たちは、庭に集まって集団で帰るのだ。
従業員が何人か付き添い、全員無事帰宅するまで見届ける。

先ほどの女の子がレイアのところにやってきた。
シュシュを手の上に乗せて、貸してくれてありがとうと言った。

レイアはちょっと待っててと女の子を玄関脇の長椅子に座らせると、自分の髪からピン止めを外した。
髪を指で梳いてもう一度ちゃんとシュシュで結んであげた。
前髪も横に流してピンで留めた。

「かわいい!このシュシュあげる」

女の子が嬉しそうに声を上げた。

「いいの!?」
「うん。お母さん忙しいと、なかなか美容室行けないよね。私もそうだった」

女の子は照れくさそうに玄関の大きな鏡に映った自分の姿を見た。

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