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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
玲央が帰っている間、ちょうどバイト先のテニスクラブも改修工事があって休みだった。玲央と一緒に友子を見舞い、三人でたくさん話をした。

夜は二人でマンションでのんびり過ごしたり、外に食事に出たり買い物に行ったりして過ごす。
レイアは久しぶりに玲央と過ごすことが出来ることが嬉しく、常にテンションが高かった。

いつもは夕方以降に見舞うが、玲央が帰ってきてからは昼食後に友子に会いに行っている。
レイアと玲央が病室に着いた時、ちょうど友子は食事を終えたところだった。

「ちゃんと食べた?」

レイアが食器を覗き込む。綺麗に全て食べているのを確認して安心する。
玲央がトレーを下げにいった。

友子は多発性硬化症という特定疾患の病気で入退院を繰り返していた。
一時、食欲が落ちていて見るからに痩せてしまったのを見てから、レイアは友子がちゃんと食べているのか気になって仕方ないのだった。

今は食欲も戻って、体型も元に戻ったように見える。
次の検査で問題がなかったら退院できることになっていた。

「食べてますよ。レイアこそちゃんと食べてるの?少し痩せたんじゃない?」
「玲央が帰ってきてからはちゃんと食べてるよ!」

友子のベッドに戻ってきた玲央が呆れたように言った。

「よく言うよ。相変わらず野菜やら果物ばっかり食べてるくせに」
「そんなことないよ。一人の時こそ野菜とか果物買わないもん。面倒だから」
「じゃあ、いつもは何食べてんだよ」

レイアはしばし無言で日々の食生活を思い出してみた。

ここのところ中園の家にいる時は、それなりのものを食べさせてもらっていたが、家では野菜ジュースやゼリー飲料で済ませていた。一人でする食事は美味しいと思えない。昔からだった。

なかなか答えないレイアを見て、友子が苦笑する。

「お魚やお肉も食べなさいよ」
「食べてるってば」
「俺がいる間はちゃんと食べさせるよ。それより・・・・・・・はい、これ」

玲央がバッグから一冊の本を友子手渡した。

「ありがとう。重たかったでしょう」

友子は本を受け取ると、嬉しそうに微笑んで表紙を撫でた。

「何?それ」

レイアが本を覗き込む。

そこにはレイアの良く知っている絵があった。
紗奈が中園のアトリエで書いている『オフィーリア』だった。

タイトルは『悲恋の女性たち』
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