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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
「絵画集よ。急に見たくなって玲央に頼んだの」
「えー?私に頼んでくれたらいいのに」
玲央がジロリとレイアを睨んだ。
「レイアは本棚に何の本があるかなんて把握してないだろ」
「タイトル言ってくれれば探せるわよ」
「重たいから玲央に頼んだの。それだけよ」
友子が苦笑してレイアを諌めた。
レイアはぷーっとふくれて本を手に取って言った。
「私、この絵知ってる。オフィーリアっていうのよ」
玲央が驚きの声をあげた。
「レイアが知ってるなんて驚きだな」
「紗奈っちが描いてるのよ。わ~ほんとそっくり!」
レイアはまじまじと本を見つめた。
「へえ・・・・・・。レイアのお友達、この絵を描いてるのね」
「うん。すっごく上手だよ」
友子が急に神妙な面持ちになってオフィーリアを見つめているのに気がついて、レイアと玲央はチラと一瞬目を合わせた。
(悲恋・・・・・・か・・・・・・・・)
レイアは改めて水に沈みそうになっているオフィーリアを見た。
「確か・・・・・愛する人にお父さんを殺されたり、ひどいこと言われたりして、あんまり悲しくって、ちょっとおかしくなっちゃって死んじゃうのよね。すごく悲しい物語なのに、なんでこんなに美しく描くのかしら」
玲央が怪訝な表情をして尋ねた。
「どういう意味?」
「だから・・・・・’悲しい’は、’悲しい’でしかないじゃない。そこに’美しさ’を求めるなんて嘘っぽい」
友子がクス・・・・・と笑った。
「レイアらしいわね」
玲央が小さくため息をついた。
「闇夜に消えていく花火が美しいと思うのと一緒じゃない?一瞬の輝きだからこそ美しい、みたいな」
「そんなことないよ。花火が消えたら寂しいよ」
「でも、消えずにはいられない。若く一番美しい時に死ぬからこそ悲しく、美しい」
友子はそうね・・・・・と小さく笑うと、本を読み上げるように言った。
「’自分が溺れるのも知らずに、しきりと歌を口ずさんでいました。・・・・そのうちに、着物は水を含んで重たくなり、可愛そうに、美しい歌の声が止んだと思うと、あの子も川底に沈んでしまいました’」
ハムレットで書かれた、オフィーリアの死の場面だった。
「えー?私に頼んでくれたらいいのに」
玲央がジロリとレイアを睨んだ。
「レイアは本棚に何の本があるかなんて把握してないだろ」
「タイトル言ってくれれば探せるわよ」
「重たいから玲央に頼んだの。それだけよ」
友子が苦笑してレイアを諌めた。
レイアはぷーっとふくれて本を手に取って言った。
「私、この絵知ってる。オフィーリアっていうのよ」
玲央が驚きの声をあげた。
「レイアが知ってるなんて驚きだな」
「紗奈っちが描いてるのよ。わ~ほんとそっくり!」
レイアはまじまじと本を見つめた。
「へえ・・・・・・。レイアのお友達、この絵を描いてるのね」
「うん。すっごく上手だよ」
友子が急に神妙な面持ちになってオフィーリアを見つめているのに気がついて、レイアと玲央はチラと一瞬目を合わせた。
(悲恋・・・・・・か・・・・・・・・)
レイアは改めて水に沈みそうになっているオフィーリアを見た。
「確か・・・・・愛する人にお父さんを殺されたり、ひどいこと言われたりして、あんまり悲しくって、ちょっとおかしくなっちゃって死んじゃうのよね。すごく悲しい物語なのに、なんでこんなに美しく描くのかしら」
玲央が怪訝な表情をして尋ねた。
「どういう意味?」
「だから・・・・・’悲しい’は、’悲しい’でしかないじゃない。そこに’美しさ’を求めるなんて嘘っぽい」
友子がクス・・・・・と笑った。
「レイアらしいわね」
玲央が小さくため息をついた。
「闇夜に消えていく花火が美しいと思うのと一緒じゃない?一瞬の輝きだからこそ美しい、みたいな」
「そんなことないよ。花火が消えたら寂しいよ」
「でも、消えずにはいられない。若く一番美しい時に死ぬからこそ悲しく、美しい」
友子はそうね・・・・・と小さく笑うと、本を読み上げるように言った。
「’自分が溺れるのも知らずに、しきりと歌を口ずさんでいました。・・・・そのうちに、着物は水を含んで重たくなり、可愛そうに、美しい歌の声が止んだと思うと、あの子も川底に沈んでしまいました’」
ハムレットで書かれた、オフィーリアの死の場面だった。