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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
レイアはちぇっと拗ねてみせた。おそらく女の人なのだろう。
仕方ない。今日からテニスクラブが再開しているから顔を出して、オーナーにご飯を食べに連れて行ってもらおう。

電車を乗り継いで、高級住宅地にあるテニスクラブへと向かう。
クラブの外観は綺麗に塗装され、ライトアップされて輝いていた。

レイアは従業員が出入りする裏口の方へとまわると、ドアの前に俊がいた。
濃紺のスーツにグレーとピンクのネクタイを締めて姿勢良くじっと立っていた。

「あれ?どうしたの?」

レイアの姿に気がつくと、俊はレイアの前まで急ぎ足で近づいた。表情が硬い。
中園の家に行かなくなってまだ一週間と経っていないはずだったが、もっとずっと長い間会ってなかったような感覚だった。

「すまなかった」

俊は開口一番そう言うと、頭を深々と下げた。

「・・・・・・へ?」

レイアは思わず間抜けな声を出した。

「君に酷いことを言ってしまった。悪かった」

わざわざこうして謝るためにここで待っていたのだろうか。レイアが来るかどうかもわからないというのに・・・・・。

「君の気が済むまで責めてくれていい。俺とは口をきかなくてもいいから、また中園の家に来て欲しい。皆、君が来なくなって心配してる」

レイアは自分が思っていた以上に俊が深刻になっていることに慌てた。

「ちょっと待って!そんな・・・・・そこまで気にしてないから大丈夫。私も悪いこと言っちゃったし」
「いや・・・・・・君が一番言われたくないことを言った。俺が悪い。ほんとに・・・・・申し訳なかった」

こんなに表情が暗く、切羽詰った俊は初めて見た。ずっとこうして悩んでいたのだろうか。
レイアは申し訳ない気持ちになって、俊を元気付けるために肩をぽんと叩いた。

「わかった。じゃあ・・・・・お詫びに夜ご飯ご馳走して!」
「え?・・・・・・ああ、もちろん、そのくらいはさせてもらうが・・・・・」
「焼肉がいいな!」

レイアは食事相手が見つかって単純に喜んだ。しかも、ご馳走してもらえるのだから倍嬉しい。

俊はレイアの笑顔を見て、ほっとしたようだった。
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