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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
「俺が醜い姿の時に寄ってくる女なんて一人もいなかった。避けられてバカにされて屈辱的な想いを沢山した過去があったから、今になって言い寄ってくる女みんなに腹が立って。中園の家で働いてるって聞きつけて声をかけてくる大学の同級生や後輩もいて、そういう子は特に見下した」

レイアとはまた違った容姿の問題を抱えていたことを知って、複雑な気持ちになった。

「適当につきあって、相手が本気になったら捨てるように別れたりして・・・・。ここまできたら建前じゃなくて本音で話すけど、この前のあの彼女は・・・・・。医者やってて、頭も良くて、そこそこ美人でっていう、俺の中で上位に位置する女って印象だったから、それこそ今までの腹いせに付き合ったみたいなもので・・・・・。最後はすごく傷つけて別れたんだ」

あの時の彼女の笑っていない目を思い出す。あの目はレイアに向けたというより、俊にされた過去を思い出してのことだったのかもしれない。

「つまり・・・・・俺にとって君という存在は、醜かった頃の自分を思い出させるというか・・・・・。生まれながらの、嘘偽りのない美しさを持つ君を前にすると、今の自分が偽者のような気がして・・・・・」

俊は何て言ったらいいのか、言葉が出てこないといった感じで黙ってしまった。

(それで・・・・・’君みたいな人にはわからない’・・・・か)

レイアは俊が思わずあのように言ったことを、今なら理解できる気がした。

醜かった頃の自分を蔑んだ女性立ちへの復讐として付き合った彼女に対して罪悪感を抱えているのに、もったいないやら理想が高いなどと言われては、自分を酷く責められた気がしただろう。
俺だって歪んだ感情を持たない人間で、純粋に人と付き合うことが出来ていたら、どんなに良かったことかという俊の叫びだったのだ。

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