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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
二人で和子たちが待つ部屋へと移動する。
玲央は15万15万・・・・・・とぶつぶつ唱えながら、恥ずかしさと戦っていた。

二人が部屋に入るなり悲鳴が上がった。

「きゃああッ!!」
「なんてこと・・・・・・!!」
「タッジオだわ!!本物よ!!!」

撮影会は大盛り上がりで、二人は和子たちが希望する様々なポーズを取って撮影に応じた。

「レイアちゃん、ここに座って、足を組んで、こう頬杖を・・・・」
「玲央くん、手を後ろに組んで・・・・・向こうからゆっくり歩いてきて!」

映画のシーンを再現するべく細かい指示を出してくる。
レイアは玲央が言われるがままにポーズをとる姿を見て内心爆笑していた。

(俊にも見せたいなぁ・・・・・・)

レイアはふと思い立って、俊を呼びにいくことにした。
一人取り残される玲央は目で置いていくなと抗議したが、無視して撮影部屋を出た。

今日は土曜日だが祝日で、俊は休みのはずだ。
仕事部屋でなく、俊の個人の部屋に向かおうと屋敷の一番奥の階段を上っている時、俊が階上から降りてくるところだった。ブルーのシャツに黒いパンツのラフな格好だった。
踊り場にある窓から柔らかな日差しが入り込んでいた。

「やっほー!」

レイアは手を上げて声をかけた。

「なんだその格好は・・・・・」

俊は目を見開いてレイアの格好をしげしげと眺めた。

「和子さんの要望で撮影会してるの。どう?似合う??」
「・・・・・・ああ」
「ベニスに死すのタッジオだって。知ってる?」
「ああ・・・・似合ってる」

俊はそっけなく言うと、もう用はないだろという雰囲気で階段を下りていく。
ノリの悪い態度にレイアがムっとする。

ここ最近のよそよそしい態度も気になっていた。また遊びに来て欲しいとあれだけ熱心にお願いしていたではないか。

すれ違って俊が数段階段を下りた時、レイアは俊の腕を掴んだ。

俊が振り返る。階段二段分高い場所にレイアがいたから、珍しく俊を見下ろす形になった。

「・・・・・・何?」

レイアはじっ・・・・・と俊の顔を覗き込んだ。

妙に冷静な表情が気に入らない。レイアはこのポーカーフェイスを崩してやりたい気持ちになって顔を傾け近づけた。

キスする寸前でぴたりと止まる。

「なーんちゃって」

俊がビクっと体を震わせた。
レイアは驚いた表情を見て満足する。
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