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月夜の迷子たち
第2章 再会
「どんな?うーん、なんか・・・・ちょっと冷たい感じ?歳は二十六って言ってたかな。眼鏡かけてて・・・・背がやたらでかかったなー。すごい俺を品定めする感じで見てさ。そっちから依頼してきたくせに、疑い深い目で観察すんのよ」

紗奈が不安そうに表情を曇らせたのを見て、耕太は慌てた。

「いや、でも、お前の絵をいくつか持ってって。すぐ納得してたよ。技術は間違いないですねとかなんとか」

冷たい・・・疑い深い・・・

そんな人と何日も一緒にいられるのだろうか。
ただでさえ、普段人と接する機会の少ない自分が・・・・。

その後の紗奈を気遣う耕太の言葉はほとんど耳に入ってこなかった。
気がつくと車は大きな屋敷の門をくぐろうとしていた。

こんなに大きな屋敷が東京の真ん中にあるなんて・・・・。

紗奈は信じられない気持ちで広大な敷地にそびえ立つ洋館を見つめた。

美しく手入れされた庭園を通り、屋敷の前の広場までゆっくり車をすすめると、使用人らしき男性が耕太の車のキーをあずかり、車庫に入れてきますのでどうぞお入りください、と大きな玄関の扉を開けた。

紗奈の体が強張る。

「こ、耕太くん・・・」
「だ、大丈夫だ」

耕太も緊張で表情が固くなっていた。
紗奈の心臓がドキドキからバクバクへと変化する。

扉を開けると、使用人であると思われる女性が頭を下げて挨拶をした。

「ようこそおいでくださいました。こちらへどうぞ」

大理石の大きな玄関ホールには映画に出てくるような螺旋階段が続いていて、階段をのぼりきったところには大きな絵画が飾ってある。風景画だったが、誰のものだろう。判断する余裕もなかった。

こちらでお待ちください、と通された部屋はおそらく応接間として使われているのだろうが、あまりに豪華すぎた。

煌びやかな調度品の数々に、ロココ調の家具。大きな花瓶に生けられた大量の美しい生花。
重厚なカーテンは開けられ、窓から優しい日差しが入り込み、天井のシャンデリアがキラキラと反射する。

どこに座ればいいのかわからず動けないでいる紗奈を、耕太がここだよと促す。

耕太が座った猫足のグリーンのソファに横にそっと腰を下ろした。

先ほどの女性が紅茶を運んできて、並べてくれる。これもおそらく高級な食器なのだろう。とても飲む気になれないが、耕太は遠慮なくごくりと飲んだ。
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